笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
でも、約束した日は雨で、僕らは予定を変更して水族館へ向かった。
「うわぁ…」
初めて来たワケじゃなかったけど、
頭上を悠然と泳ぐジンベエザメに思わず足を止める。
潤「智、ってホントに魚好きだよな?」
「あ……」
笑いながらこちらに歩み寄ってくる潤の姿に我に返る。
「ごめん。」
潤「いいよ、別に?今はいいけどさ…」
然り気無く、僕の肩に回された腕に、びくりと体が跳ねた。
でも、もっとドキドキしたのは…
潤「そんな風に俺のことも見てくれたら嬉しいかな、なんて…」
「えっ…?」
潤「あっ!?ほら、智、あれ!!」
照れ隠しなのか、潤が何かを見つけて指さす。
その先には愛くるしい姿で悠々と泳ぐマンボウがいて、
感嘆の声をあげようとした僕の唇を、
柔らかくて、温かなぬくもりが塞ぐ。
「じゅ…」
潤「俺だけを見て。」
熱っぽく囁く目。
その目に引き寄せられるように僕らはまた、
唇を重ねた。
スマホが鳴動する音にハッとする。
窓の外は、甘い思い出に浸っていた自分を嘲笑うかのように雨が降っている。
雨なんて……雨なんてキライだ。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える