笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
翔「どうかしたんですか?顔色が…」
「ごめん…最近寝不足だからそのせいかも?」
笑って誤魔化すけど、軽い目眩がして思わず壁に手を付いていた。
するとそれに気づいた櫻井くんが椅子を引き寄せ僕を座らせてくれる。
「…ありがとう。」
翔「いえ…」
心配そうに此方を見つめてくる大きな目。
その彼の額に、濡れて貼り付いた前髪で思い出す。
「そうだ!!タオルを…」
翔「…いいから。座ってて下さい。」
立ち上がりかけた体を押し戻すように肩を押される。
「でも、そのままだと風邪引く…」
翔「大丈夫ですよ?そんな柔に出来てないから。」
ほら、と、シャツの腕を捲り力瘤をつくって見せた。
「ふふっ。櫻井くんて、見かけによらず逞しい体してるんだね?」
翔「えー?見かけによらず、って…俺、どんな風に見られたのかな?」
「ご…ごめんなさい。」
翔「サッカーしてたんです。ほんの数年だけど?」
「そうなんだ?僕はずっと帰宅部だったから尊敬するよ。」
翔「それほどでもないけど。やってた、ってだけだし。」
そう言って、恥ずかしそうに笑う彼の顔はやっぱりまだ幼さが残ってて、
落ち着いて向き合えば潤とは似ても似つかない部分が多々あるのに、どうして面影を重ねてしまったのか不思議でならなかった。
それだけまだ僕が、潤のことを引き摺ってる、ってことなんだろうな…。
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