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笑い、滴り、装い、眠る。

第7章 雨の日は家にいて



昼食を簡単に済ませたあと、水晶やストラップパーツ、それらを連結させるためのパーツなどを作業台に用意して作業に取りかかった。



まずは電動の彫刻刀で水晶に文字を彫り入れていく。



途中、水晶を水に浸けながら慎重に作業する。



水晶を水に浸けるのは、熱を持つと石が割れやすくなるからだ。



よし、出来た。



最初に入れた文字は『S』。



櫻井くんのイニシャル。



そしてそれとは他に、もう一つの石に同じ文字を彫り入れた。



僕の名前である「智」の『S』。



いいよね?これぐらい。



持ってるだけなら、と、


その水晶を丁寧にハンカチで包み、作業台の引き出しにしまいこんだ。



『K』の文字も彫り入れたところでふと窓の外に目線を移すと小さな雨粒が一つ二つと貼りついていることに気づく。



もしかしたら、と、そばにあった携帯を手に取るも、



彼からのLINEは来ていなかった。



そんな偶然、そうそうあるわけないか?



作業が一段落したタイミングで少し休憩しようと椅子から腰を上げた時だった。



僕の携帯がけたたましく鳴った。



誰…?



パネルを見ると、数か月前まで、僕の隣にいた、



あの人からだった。



「は…い。」


潤『智…か?』



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