笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
相変わらずな俺様ぶりに思わず笑みがこぼれる。
潤『じゃあ…そろそろ行くな?』
「…うん。」
潤『仕事、うまくいってるみたいでよかった。』
「え?」
潤『今、客と打ち合わせしてんだろ?』
思わず立ち上がって、窓の側に駆け寄る。
曲がり角に、隠れるように止められたタクシー。
後部座席で見え隠れする人影。
潤『じゃあな?』
「あ…潤、待っ…」
声が聞こえなくなって尚、僕は携帯を握りしめたまま外へ飛び出し、すでに走り出したタクシーを追いかけた。
でも、追い付く筈もなく僕はずぶ濡れのままタクシーのテールランプが、
見えなくなるまでその場で立ち尽くしていた。
翔「風邪…引きますよ?」
雨の中、傘もささずに飛び出していった僕を心配した櫻井くんが、なすすべもなく立ち尽くしている僕に傘をさしてくれた。
「…ありがとう。」
翔「いえ…そんなことより、早く着替えた方がいい。」
「そうだね…」
今日が雨でよかった。
傘をさしてなくてよかった。
だって…
あの人を思って泣いていたところを、
君に見られるところだったから。
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