笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
「違う…よ?」
櫻井くんに手を握られるまで気づかなかった程に、震えていたことに気づかなかった僕。
「好き『だった』人。」
びっくりした顔で握られた手と彼の顔を見比べた。
翔「あ…ごめんなさい。寒いのか、と思って。」
「別にいいよ?ありがと。」
慌てて離れていく手を目で追いかける。
ひどい人だね、君は?
潤は僕のことを言い訳に夢を諦めようとしたけど、
君はもっとひどい。
だって、大切な人がいるのに、好きでもない僕のことを心配してくれる。
平気で心のスキマに入ってこようとしている。
そして、完全に、僕の心の中にいつくようになったら、
そうなったら君は、きっと、
離れていくに決まってるんだから。
「何か……飲む?」
翔「あ…俺、淹れてきます。」
立ち上がりかけた僕を制しながら櫻井くんが立ち上がる。
「じゃあ…お願いしていい?」
翔「もちろん。いつもご馳走になってるし?」
勝手知ったる場所とばかりに櫻井くんはキッチンに入ってヤカンを火にかけた。
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