笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
しばし二人で無言でコーヒーを啜った。
そんな中、ふと、櫻井くんが作業台に目を止めた。
あ…そう言えば、途中だった。
伸び上がって、覗き込んでいたが、何かに気づいて作業台に近づいていく。
翔「あの…見せてもらっても…」
「どうぞ?」
見られて困るものは何もないからその申し出に快諾する。
櫻井くんは物珍しそうに、作業台に置かれた材料や機材を手に取っては時々、感嘆の声を上げた。
翔「何か…スゴい手間暇かかってるんですね?」
「うん。やるからには本格的にやりたかったからね?」
櫻井くんは電動の彫刻刀を舐め回すように見ていた。
「やってみる?」
翔「いいの?」
貸して?と、手渡された彫刻刀のスイッチを入れ、櫻井くんの手の中に戻した。
「はい。これ。」
僕が練習用で使ってる、作品には使えないような大きめの石を手渡すと、櫻井くんは目を白黒させた。
「ふふっ。心配しなくても練習用だから。」
翔「あ、そっか…」
「気を付けてね?普通の彫刻刀よりは軽いから、あんまり力入れすぎると怪我するかもしれないし。」
翔「あ、じゃあ…『先生』お手本を…」
櫻井くんはおどけて電動の彫刻刀を僕に手渡した。
「じゃあ、よく見てて?」
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