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笑い、滴り、装い、眠る。

第7章 雨の日は家にいて



ホントはもっと一緒にいたかったけど、



誰かを思って笑う櫻井くんを見るのは耐えられなかった。



僕、ってばそんなに櫻井くんのこと…



久しぶりに潤の姿を見た時は心の準備もできてなかったせいか、泣いてしまったけど、



今となっては漸く過去のことだ、って思えるような気がさえする。



でも、気づいてしまった。



やはり僕は彼のことが好きなんだ、と。



恋人がいる、って知っていて尚、始まってしまった想いを止めることが出来そうにない程に。



でも、止めることは出来なくても、想い続けることは構わないだろう。



作業台の引き出しをそっと開けて確認する。



自分の想いの深さを。



彼と同じイニシャルが刻印された水晶玉。



いいんだ…これで。



互いに違うものを見ていたとしても、



報われなかったとしても、



いい思い出となって、これからの創作活動の糧になってくれたら、って思ってる。



「………。」



本当……に?



左手人差し指に巻かれた絆創膏が語りかけてくる。



終いには、彼がその指先を唇に含む残像までもを見せて問いかけてくる。



彼のことが欲しくないのかと、



想いを遂げたくないのか、と。



心の声にフタをするみたいに僕は、



絆創膏が巻かれた指先を隠すように手をぎゅっと握りしめた。



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