笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
しばらく箱の中に収まったストラップを眺めたあと、
それを受け取った相手の姿を思い浮かべていたのか、櫻井くんは嬉しそうにずっと眺めていた。
翔「あっ!!す、すいません!!つい嬉しくて…おいくらですか?」
慌ててジーンズのポケットに手を入れ財布を取り出した。
「あ…ごめん。まだ、金額出してなくて…」
翔「え?あ、そうなんだ?」
「ホントにごめんなさい。他の注文の納期が立て込んでて。それで…」
翔「へぇ…やっぱ、腕いいんだね?」
「そっ…そんなことないよ?」
翔「ある、って?俺、服のセンスはイマイチとか言われるけど、こういうのは見る目あるから?」
「ホントにぃ?」
翔「ホントだって!?でなきゃ俺、いいとこないじゃん?」
「ふふっ。そうなんだ?」
翔「あっ!!今、笑った?」
「…うん。」
翔「はっきり言うなあ。」
不意に櫻井くんが工房を見回した。
翔「もしかして、もう、仕事終わり、とか?」
「あ、うん。たまには早く切り上げようかと思って?」
翔「あの…大野さん、て飲める?」
「飲める…けど?」
翔「これからご飯、食べに行きませんか?」
「え?」
まさかの…食事のお誘いに、一瞬、口から心臓が飛び出そうなぐらいに跳ねた。
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