笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
あれから僕と櫻井くんはより親交を深め、いつの間にか僕は櫻井くんを「翔くん」と呼ぶようになっていた。
翔くんは相変わらず「大野さん」と呼ぶのに…
翔「えっ?ちょっと安すぎない?」
見積よりもかなり安値を提示された翔くんは目を丸くした。
「大丈夫。これでも材料費分以上はあるから。」
翔「にしてもこの金額…カズのヤツ、スッげぇ喜んでたからもっとふっかけてもよかったのに?」
翔くんは請求書を見て眉尻を下げた。
相手の子、「カズくん」っていうんだ?
「あ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて少し足しても…」
翔「あっ!!これでいいです。」
いたずらっぽく笑いながら請求書に手を伸ばした僕の手から逃れるように、櫻井くんが僕から少し後ずさる。
「ふふっ。冗談だよ?」
翔「相変わらず繁盛してるね?」
「あ…うん、お陰さまで?」
散らかったままの作業台と、前掛け姿の僕を見比べる翔くん。
翔「じゃ、俺、これからサークルの仲間と約束あるんで?」
「あっ…あのっ!!」
踵を返した翔くんを呼び止める。
「…何でもない。ありがとね?今日はわざわざ来てくれて?」
そんなこと…言いたかったんじゃない。
僕が聞きたかったのは君がまた…
君がまた、会いに来てくれるのか、ってこと。
翔「あ、そうだ?よかったらまた飲みに行きましょ?」
「え……?」
翔「あとでまた連絡します。じゃ。」
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