笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
その日、急ぎの仕事があった僕は、合間をみてコンビニへと脚を運んだ。
折しもその日は梅雨空け宣言が出されて初めての猛暑日となり、歩いて五分ぐらいの距離さえ長く感じられた。
雅「いらっしゃい…あっ!こんにちは。」
今ではすっかり顔馴染みになった店員の相葉くんに片手を上げ挨拶する。
雅「もしかして今日も仕事場に籠るの?」
「うん。明日の昼頃までに仕上げないとならなくて。」
雅「へぇ…繁盛してんだね?」
僕は栄養ドリンクを2、3本手にすると、静かにカゴの中に収めた。
「そうでもないよ?こだわりすぎて逆に材料費のほうが高くついちゃって、いっつも赤字。」
相葉くんの側で、不思議そうに僕らの会話を聞いてる男の子と目が合う。
そんな僕の目線に気づいた相葉くんが、彼に僕を紹介してくれた。
雅「この人ね、この近くに工房持ってて、そこでいろんなもん作ってんの。」
和「へぇ…」
「何でも、って訳じゃないけど…」
大袈裟な言い回しに、照れ隠しに頭を掻いた。
雅「それに美人でしょ?」
「あ、相葉くん!?」
雅「いーじゃん?別に?」
もー、スッゴい見てるじゃん?
和「う…うん。」
雅「ほらぁ。それに見て!この手。どこからどう見ても職人の手じゃないでしょ?」
和「ホントだ…」
「もう…!相葉くん!!」
慌てて手を隠した。
雅「そのせいでたまに女の人に間違われるんだよね?」
和「そうなんだ?」
興味津々の、キラキラした目で彼が僕を見つめる。
その彼の目から逃れるように適当にお弁当やら飲み物なんかをカゴに入れ、店を飛び出す。
まさか…
まさか、その彼が、
翔くんの相手の子だったなんて、
思いもよらなかったけど…。
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