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赤い糸

第11章 タイムリミット


直也にタイムリミットが近いと告げられてからずっと思い出していた。

アイツは覚えていないけど俺はしっかり覚えてる。

璃子があの病院で働く前の夢…

“英語を活かした仕事がしたい”

あの医者に辞退を申し入れてるみたいだけどそれは本心なんだろうかと

俺は将来の夢がちゃんとある。そのために今の職業につき一から勉強させてもらってる。

じゃあ、璃子は?

目の前に夢が転がってきているのにそれを捨てろと?

それも、俺への感情が大してないいのに…

こんなことを考えてしまってばかりだからバッドは空を切りチャンスを潰す。

さて、今の俺に出来ること

「本当はアメリカ行きたいんだろ。」

それはコイツをもう一度手放すこと。

璃子の居ない生活がどれだけ寂しくて

「俺に遠慮してんだろ。」

辛いかわかっているのに

「そんなこと…」

俺はコイツの前ではいつも格好つけていたいみたいだ。

「あるだろ。俺はずっとおまえを見てきた。だから 仕事とはいえ生の英語に触れて帰ってきたときのおまえの充実した顔を知ってるんだよ。」

そう、これでいいんだ。

「チャンスは今じゃないか?」

俺がまた我慢すればいいんだ。

「っていうか、さすがにあと半月もねぇのに辞退すんのも社会人として可笑しな話だろ。」

俺はおまえと一緒に居るようになってこんなにも大人になったんだぞ。

大きな瞳からいくつもの滴が頬を伝う。

「行きたくないです…私は京介さんと一緒に…」

「だから、よく考えてみろって。」

俺はおまえが知らないおまえを知ってるんだっつうの。

「イヤです!」

一見フワフワしててなんにも考えていないように見えるのに

「アメリカに行くつもりはありません!」

いつも誰かのためになることばかり考えて

「璃子。」

自分のことを後回しにしてしまうその損な性格。

「ずっと京介さんと…」

意外と頑固な性格。

「あ~面倒くせぇ。」

でも、それ以上に俺は頑固なんだ。

「別れようぜ。」

もし、おまえが首を縦に振らなくても

「なんで…」

おまえとの時間が最後になったとしても

「別れよう…俺たち。」

愛した女の後悔する顔だけは一生見たくはない。

「もう疲れたよ。」

記憶喪失になったあの日からすべては決まっていたんだ。

「イヤだ!」

もう時間は元には戻らないって。

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