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恋人は王子様…!

第3章 ドキドキします sideN

ピーンポーン

「お母さん、手放せないから出て!」
「うーん…」
重い腰をあげて、玄関に向かう
誰ですか?こんな時間に
「はい…?」

「カズ、ただいま。」

甘い声。

胸の奥がギューっと痛くなった
「…おかえり」
消え入りそうな声で呟く
「ちょっといい?」
優しく手首を掴まれて、玄関から連れ出される。
「あの、あの。」
ねぇ、どこ行くの?
あの、今日すごかったんだってね。
母さんが興奮してたよ。
でも、実は俺も潤くんがステージに立ってるとこ、見てたんだよね。
たくさん話したいのに、胸が苦しくて言葉が出ない。
「カズ、鍵閉めた?」
「あ…あ、忘れてた。」
声が掠れる。
「…たく。」
満面の笑みの潤くんにのぞきこまれる。
「ちょっとニノ、借りまーす!夕飯までには送ります!」
キッチンに向かって声をかけ、指を絡ませられる。

「どこ…どこ行くの?」
「秘密。」
外に出ると自然に手を離していた。
「こっち」
「…え、潤くんの大学の方面じゃない?」
「正解」
額にチュっとキスをされる
「ちょっと、外…!」
「暗いから大丈夫」
「え、でも」
「後夜祭、一緒に行こうよ」

また胸がギューっとなった。

苦しい。
息が、胸が。

「今日ずっとカズのこと、考えてた。」
耳元で囁かれておかしくなりそうだ。
「ステージからカズのこと、探してた。」

もう、やめて。
好きすぎて、かっこよすぎて、苦しい。

「…見つけたよ。可愛いカズのこと。」

あなたは王子様ですか?

お姫様やお嬢様を差し置いて、村人Aが王子様に見初められてもいいんですか?

誰か祝福してくれますか?

あなたはたくさん捨てなきゃいけないんじゃないですか?

「カズ…愛しいよ?」
潤くんの顔が、声がどんどん男になっていく。
「こっち」

校舎と校舎の隙間。
レンガの壁に押し付けられ、視線でキスをせがまれる。
「だめ…外」
「カズ」

目を閉じると唇を押し付けられ、舌を差し込まれた。

夢なら醒めないで。
魔法なら12時の鐘は鳴らないで。

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