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恋人は王子様…!

第4章 12時の鐘を超えていけ sideN

人に見られるかもというスリルのせいだろうか。
いつもより…キス、いいかも。
膝がガクガクしてきた。

「!」
全身から力が抜けて崩れ落ちそうになった瞬間、潤くんに抱きとめられた。
「大丈夫?」
「う、うん。」
「…いこっか。」
「うん。」
夜のキャンパスに繰り出す。

「うちの大学、イルミネーション愛好会ってあってさ、そこがこうやって飾りつけてくれてんだよね」
「すごく…綺麗だね」
潤くんが笑う。
そうでしょ?って楽しそうに。
まぶしくて、恥ずかしくて下を向くと、視界にパンプスがはいった。

「潤くんじゃん!」
この声はパンプスの主だろう。
恐る恐る顔をあげると美人な女の子の集団が潤くんを囲んでいた。
「後夜祭来るって言ってなかったじゃん」
「あー…気まぐれ?」
「ね、一緒にまわろうよ」
「そのお友達も一緒でいいしさ」
村人A、大ピンチ。
貴族の娘が王子様に色仕掛けしてます。
今の俺の選択肢は2つ。
逃げるか帰る。
そもそも、外出るの嫌いだし。
イルミネーションとか無理だし。
後夜祭とか別次元だし。

「ごめん」

「え?ちょっと一緒にまわるだけだよ?」
「どーせ潤くんもキャンパス歩くんでしょ?」
「うん、でもごめんね?」
ごめん、って彼女らに言ったの?
俺のこと、優先してくれんの?
「カズ、行こっか」
「うん…」

しばらく黙って歩いてた。
潤くんが俺を優先してくれる理由はなに?
俺、潤くんに大切にしてもらえるような人かな?

「カズ」
「な、なぁに」
「今日、泊まってもいいかな?」
「え…え、もちろん。母さんも喜ぶよ。」
「すげームラムラする。」
「今!?」
「うん」
どんな顔でそんなこと言ってんの?
見れないよ。
顔あげれないし。
「家まで我慢できる…?」
「厳しいかな。」
「ええ?」
じゃあどうすんの?
まさか、ここで…?
「嘘。我慢できる。あー、カズの母さんのごはん美味いからなー。久々にカズの父さんにも会いたいしさ」

潤くん、どうしてそんなに好いてくれるんですか?
期待しちゃうじゃないですか。
魔法にかけられて、幻のドレスを着てガラスの靴を履いてなくても、愛してくれるんじゃないかって。

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