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運命の人

第2章 初めての会話


全力を尽くしたが、結果はそのお客様に住宅ローンを組ませてくれる銀行は見つからなかった。

金利がばかみたいに高くなり、
お客様の希望する月々の支払いよりはるかに越えてしまうのだ。

会社は、それでも契約するように進めた。

お客様をその支払いで納得させろというのだ。


わたしは、米田課長に報告した。
事情を説明し、どうしたいかの気持ちを伝えた。


まりな
『正直、こんな形ではお客様に購入させたくないです。』
『これから苦しくなるのが目に見えています。』

米田課長
『永石が言うことは正解かもしれない。だけど、買わないことはもしかしたらお客様を苦しめる結果になるかもしれない。』


そう、買わなければおそらくこの人はずっと買えないお客様である。

つまり、今の生活環境のまま賃貸としてお金を払い続けていかなければならない。

ただ今の支払い金額のリスクも落ち着いて話してくれた。

米田課長は営業マンとしての考え方をたくさん教えてくれた。


わたしは決断した。

まりな
『今回、お客様には物件購入をあきらめてもらいます。』

米田課長はただただ聞いてくれた。


米田課長
『永石のいいところは、成績関係なくお客様を思えるところだな。』
『だけど、会社のことも考えなければならない。』
『俺ならこういうときどうすると思う?』

まりな
『...わかりません』
『米田課長ならどうされるんですか?』

米田課長
『ちがうお客様で契約するんだよ。』

まりな
『かっこいい・・・』
(心の声が漏れてしまった。)

まりな
『米田課長はやっぱりうちの会社で一番すごいと思います。』
『さすがです。』

この言葉を言った直後、

『ぶちっ・・・』
と電話が切れてしまった。

プルルル・・・

そのあと知らない番号からの着信だった


まりな
『はい。』


『あ、もしもし、永石?』

まりな
『米田課長!?』

米田課長
『会社の携帯充電きれて・・・』

まりな
『そうだったんですね。』
『ありがとうございます。』
『今回のことで住宅ローンの知識はだいぶつきました。』
『逃げたくなったけど、米田課長のおかげでなんとかがんばれました。』
『ほんとうにありがとうございました。』

米田課長
『またなんかあったらいつでも連絡しておいで。』

と電話を切った。

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