君がいる風景
第15章 秘密の
雷を見るとどうしてもあの日のどす黒い塊が
そこから伸びる無数の手が脳裏に浮かんで恐怖に
支配されそうになる。
バイト先でのピアノ演奏は、
自分を精いっぱい鼓舞する為だった。
天気予報で雷注意報が出てたから、せめて
自宅に帰るまでは雷が鳴らないでほしいって願ってた。
バイト先のみんなや智くんにも、
みっともない醜態を晒したくなかったんだ。
なのに意地悪な秋の天気は待ってくれなくて
電車を降りる頃には本格的な稲光りと雷で
情けない姿を智くんに見せてしまった。
塞いでる耳にイヤホンしてくれて
抱き抱えるようにして走りだしてくれた。
1人で帰ってくれればよかったのに
俺のせいで智くんまでずぶ濡れにしてしまった。
ふるえる手だとうまく鍵穴に差し込めなくて
窓の外で光った強烈な稲光り激しい落雷の音
縋り付いて泣き出してしまった俺を智くんが
つよく抱きしめてくれた。
ずぶ濡れのまま
智くんの胸元に顔を埋めてるとあり得ない言葉が
耳に飛び込んできた。
「翔ちゃん好きだ。
俺、翔ちゃんが好きなんだ」
「っ…うっ…くっう…んん…んふっ…」