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君がいる風景

第2章 出逢い


帰り道の電車

無性に絵筆を握りたくなってきてる。

小さな祠に手を合わせながら
薄目を開けて供え物を確認してみても
そこにはなんにも置いてなかった。

鍵を拾って供えてくれた人が
いったいどんな人だったのか気にはなるけど、
これ以上は追求出来ない。

感謝の気持ちは手紙と柿で伝えれた
それに対して御礼のメモまでもらったんだから

もう物語は完結してしまったんだ。






部屋に帰ってきても食欲はわかなかった。

ビール片手に久しぶりに手にしたスケッチブック
を開いてデッサン用の鉛筆を握ると
気が付けば数枚の人物画が仕上がってる。


昼間に出逢って
ずっと脳裏に焼き付いている

微笑む顔、緊張した面持ち、真面目な横顔
立ち姿に後ろ姿


店の裏口で初めて出逢った時と、休憩中
ほんの数分見たくらいなのに

櫻井翔

こんなにも鮮やかにイメージが浮かんでくることが
自分でも解らなくて

ひとつの物語が終わって、
またあらたな思いが自分の中で形づいて生まれて
来そうな不思議な感覚。

戸惑いと躊躇いが混じった気分で長い時間
見入っていたスケッチブックを閉じた。


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