君がいる風景
第5章 夕飯
「智くんって絵を描くの?」
「まあな、これでも入選したことも
あるんだからな。」
「すっごいね!今はその絵はないの?」
「ねえんだ。
再婚した時に母ちゃんが持って行ったからさ。」
「そっかぁ智くんの描いて絵みたいなぁ」
「また今度な。
最近はあんま描いてねぇからさ…」
ちいさな嘘。
あの部屋にあるスケッチブックは絶対に見せらんねぇ。
二階は俺が学生時代に使ってた寝室くらいで、あとの数部屋はガランとしててなんにも置いてない。
けど、西向きにある広いベランダは、町並みが
一望できるなかなかのビューポイントで俺の
お気に入りの場所でもある。
それを言うと
目を輝かせて見てみたいって言ってきた。
ガキの頃は布団を敷いてもらって
姉ちゃんと月蝕を眺めてたり、流星群の日には
ここで寝転びながら空を見上げたりしてた。
「うわぁすっごい星空。ねぇ向こうが海?」
「そ、ここから見る海にしずんでく夕陽は
やばいくらい綺麗な時があるんだぜ。」
「海にしずむ夕陽?」
「ああ、
ガキの頃は時間も忘れてぼんやり眺めててさ
いっつも母ちゃんに怒鳴られて
ああ、飯の時間なんだって気がついてた。」
「智くんが見惚れてた、夕陽かぁ。
俺もみてみたいなぁ」
「いつでも見に来なよ」
「いいの?」