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君がいる風景

第6章 自覚


「智兄のことみんなで待ってたんだ。
ほら、はいってはいって」

先に晩酌をしてるじいちゃんはもうホロ酔いで
テーブルにぐつぐつ煮えてるすき焼き鍋を運んできてくれるおばちゃん。

俺と翔ちゃんは並んで座らせてもらって
なんだか知んねえけど5人で鍋を囲んで晩飯を
いただくことになった。

かずの親父さんは単身赴任でもうずっと長いこと
離れて暮らしてて、俺もはっきり顔は知らない。


かずが手渡してくれた七味をたっぷり取り皿に
かけると、翔ちゃんがびっくりした顔して
俺を覗き込むように見つめてくる。

かずんちで飯食うのもかなり久しぶりでたぶん
中学生の頃以来。

母ちゃん同士も仲良がよくてよくうちにかずを
連れて遊びに来てたから
ガキの頃はじいちゃんちで2人でいろんなこと
して遊んでた。


翔ちゃんも七味をかけて試しに食べようとするけど、辛い辛いって涙目になるから
俺が食ってやるって
翔ちゃんの取り皿から肉をつまんで口の中に放り込む。
甘辛い割り下と七味の辛味が絶妙に美味い
目が会うたびに微笑みかけてた。


翔ちゃんとかずが同じ大学の先輩後輩ってことの
偶然にも驚いたけど、学部は違うらしい。



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