君がいる風景
第6章 自覚
道の向こう側にある自販機
迷うことなくホットココアを選んで買ってくれて
俺に手渡してくれる。
「あのさ、なんで…コーヒーじゃなくてココア?」
「えっ?だって…
智くんに初めてお店の裏口で会った時、
ココア持ってたし、休憩中もいつも飲んでるの
ココア缶しか見たことなかったから…
俺、チョイス間違えた?」
「いやっ、俺コーヒーはほとんど飲まねぇからさ。
温っけぇ、マジでありがとな。」
俺のことすっげぇよく見ててくれてたんだ。
プルトップを開けて飲むと温かさと甘さが口いっぱいに広がる。
もう一口飲んでから翔ちゃんへ半分こなって言って差し出すとにっこり微笑んで受け取った。
「ほんと、あったかくて美味しい…」
翔ちゃんちのマンション前まで来たとき
盛大なくしゃみをだした俺に、
ちょっと待っててって声をかけてから
いそいで階段を駆け上がって2階の部屋に行き
また慌ただしく階段を降りてきた。
「智くん、これ使って」
やわらかな毛糸のマフラーと手袋。
実家から届いた冬物の衣装の中にはいってたからと破顔してふわりと首に巻きつけてくれた。
「ありがとな、めっちゃ温ったけえ」
明日の朝返すからって言うと
明日はバイトだからお店で返してくれたら
いいからねって首をすこしかしげて微笑んでくれる翔ちゃんがいた。