君がいる風景
第7章 嵐の夜に
改札口を出ると足が竦んで動けなくなる翔ちゃんが両手で耳を塞いでしゃがみ込んでしまう。
「智くんっ…ごめん…先に帰って…」
「はあ?なに言ってんだ!
そんな翔ちゃん放って帰れるかよっ」
「俺…ぁ…あの、か、雷が…ダメで……」
とりあえず腕を掴んで立たせてやる
泣き出しそうに潤んだ瞳
バックからイヤフォンを取り出して翔ちゃんの
耳にはめてやった。ボリュームをかなりの爆音にしてやって、右手で傘を差して
左手で翔ちゃんの手を繋いで走りだした。
水たまりもおかまいなしに一気に走って
自転車置き場のちいさな祠には
頭だけ下げて駆け足で通り過ぎていく。
激しく降りつける雨
途中で雷が光る度に足が竦んで立ち止まる
翔ちゃんがいたから
軒下にはいりながら、雷の様子を見てたけど、
翔ちゃんのふるえがどんどん激しくなってきてて
このまま一気にマンションまで走り切ることを
決めた。
傘をたたんで2人とも全身ずぶ濡れ状態
翔ちゃんを両手で抱き抱えるように支えてながら
走ってマンションまで到着した。