君がいる風景
第9章 出逢い 翔視点
ものすごく気になって階段付近のホームから
その3人の姿を見ようとしてた時に
電車の到着するアナウンスの声
ゆっくり階段を下りてくる背中にはご老人の姿
きっとあの人も
この電車に乗りたかった筈なのに無情に閉まる扉
ゆっくりと走りだすドアの車窓から
階段を下りてきた青年が清々しい笑顔でご主人を
背中から下ろしてベンチに座らせてあげていた。
はじめて利用したまだ名前も覚えてない最寄り駅で
強烈に焼きついた1シーンだった。
その日から
駅を利用する度にあの人の姿を探してる自分がいた。
ちょうど一週間後の同じ時間帯のホーム
その姿を見かけた時は1人で舞い上がってしまった。
だけど声をかける勇気なんてなくて
同じ車両に乗り込んで下車していく後ろ姿を眺めてた。
俺の中でその人は
週に一度出逢うだけの人になってた。
駅のホームで必ずココア缶を買ってポケットに入れてる姿と、ホームの列に並んでから
イヤホンを耳につけて音楽を聴いてること。
名前もなにも知らない
その人の事がこんなにも気になって仕方なくて、
だけど距離を縮める方法はなかった。
陰からこっそり見てるストーカーみたいだなぁって我ながら情け無く思ってたんだ。