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罰ゲームの始まり

第1章 罰ゲーム

部屋に入ったその瞬間--

「痛ッッ!! ちょっ!? 田仲ッッ!?」

肩に激痛が走り、振り返ると田仲が俺の手首を捻り、肩まで捻り上げていた。

「やめろって! ちょっ……」
「下手に動くと折っちゃうよ? 言ったでしょ? 私は合気道やってるからって」

田仲は口の端を歪に上げ、憎しみの籠もった笑みを浮かべる。

「な、何してっ……いたたっ!!」

もう片方の腕も捻られ、そのまま背中で両手首を固い何かできつく縛られた。

「結線バンドで絞めたからもうニッパーとかで切らないと外れないよ。知ってるでしょ結線バンド。プラスチック製の配線を束ねるときに使う白いあれ」

俺の動きを封じた田仲は「あははははっ!」と気の触れたような声を上げて俺の背中を蹴飛ばした。

両手の自由が利かない俺は床に倒れ、芋虫みたいに這うしかなかった。

「自ら密室に入ってくれるなんて、助かるなぁ。いい気味よ、四ノ原芳嗣君。本当の罰ゲームはこれからだから」

その一言で煮えたぎりかけていた俺の血は、瞬間に凍り付きそうになった。

「罰……ゲーム……って……」

「私にコクってデートする。それが罰ゲームだとあの二人に言われたんでしょ?」
「な、なんでそれをっ……」

首は絞められていないのに息が苦しい。
何が何だかまるで理解できなかった。

俺の質問には答えず、代わりに田仲は一枚の写真を手帳から取り出し、床に落とした。

「ッッ……」

それはあいつら二人が妖しげな外国人から何かを受け取っている写真だった。

前からヤバいドラッグに興味を持っていることは知っていたが、実際に買っていることまでは知らなかった。

「この写真見せたら何でもいうこと聞いてくれたよ、この二人。まあ、馬鹿すぎて勉強教えるのは大変だったけど」
「勉強教えるって……まさかっ……」
「馬鹿な四ノ原君でももう分かった? あのテストでの賭けも、馬鹿な二人が急に成績上がったのも、全部私が仕組んだことなの」

もう目の前というか頭上にある田仲はさっきまでの彼女じゃなかった。

もちろんクラスの端っこで呼吸音すら遠慮してる時の田仲でもない。

妖しげな熱気を眼鏡の奥の瞳に宿した、狂気に満ちた女だった。

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