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罰ゲームの始まり

第1章 罰ゲーム

放課後、俺は駐輪場で田仲を待ち伏せていた。

「よう、田仲」

田仲は片手に自転車用ヘルメットを持っている。

校則で一応決められているが誰も被っていないだっさいやつだ。

田仲はちらりと俺の方を横目で見てからヘルメットを被る。

「……なに?」

覇気はないが涼しさを感じる透き通った声だった。
そういえばこいつの声聞くの初めてかも知れない。

「ちょっと話があるだけど」
「今じゃないと駄目なの?」

意外だった。
田仲はもっとキョドった感じて話すのかと思っていたが、やけに落ち着いた喋り方だ。

しかしそんなことは関係ない。

「ああ。ちょっと来て」

返事も待たずに歩き出すと田仲はヘルメットを外してついてくる。

駐輪場の奥、体育館の裏側まで来てから田仲の目を見詰めた。

一秒、二秒、三秒……

真っ直ぐに視線をぶつけ合う。
大抵の女はこの静寂でありながら熱の籠もった数秒で意図を汲み取り、焦りながらも笑顔になるところだ。

自分で言うのもあれだが、俺の凜々しくて引き締まった表情に見詰められると舞い上がってしまうらしい。

しかし田仲は表情一つ変えず、視線も逸らさず黙って見詰め返してくるだけだ。

「なに?」

さっきと同じ『なに?』だが、今度のはさっきのより実感イラついてるのが伝わってきた。

カースト最下層のくせに生意気な感じだ。

あまりまじまじと田仲の顔を見たことなかったけど、意外と美人だった。

切れ長で鋭い目つきと白い肌、細くて筋の通った鼻やそこだけやけに艶めかしく赤い唇からは、昔絵本でみた雪女を想像させられた。

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