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罰ゲームの始まり

第1章 罰ゲーム

「そんなのただの噂だろっ!」

言いたい放題言ってくれる雪女に正直ムカついていた。

しかしこれまで落とせなかった女がいないというちゃっちいプライドが、俺をむきにさせていた。

もはや罰ゲームとか関係ねぇ。
こいつを落とさなくては気が済まない。

「別に噂とかなくても私は四ノ原君みたいな人、大嫌い」
「へぇ……意外だな」

熱くならず冷静に引いてみせる。
こういうややこしい女の対応策だって、俺にはしっかりある。

頭いいアピールの激しい女には、頭いいけど柔軟性はないね的な言葉が有効だ。

ただ余裕で落とせると思って何の作戦も立てずに押したのがよくなかった。

「何が?」
「いや、田仲ってそんな先入観とかで人を決めつける奴なんだなって」

俺の一言に田仲は思案を巡らす顔つきに変わった。

「一回俺とデートしてみない? それで決めてみろよ、俺が大嫌いなのか、好きなタイプか」

試すように提案すると顎に手を当ててうつむく。

斜め上から見下ろすと田仲のまつ毛が意外と長いことにも気付いた。

悩んでいる姿は、正直普段遊んでいる女たちにはない知的な美しさがある。

田仲のくせに生意気だ。

「それとも」

俺は屈んで田仲に視線の高さを合わせて微笑む。

「田仲にはもう彼氏がいるとか?」

その一言で、それまで顔色一つ変えなかった田仲の顔はぶわっと赤く染まった。

「別に、そういうのは……ないけど……」
「じゃあいいじゃん。決まりな。今週の日曜、俺とデートだからな」

ここはわざと少し強引に捻こむ。

少女漫画や乙女小説に出てくる俺様的な口調は俺なりのサービスだ。

「まあ、はい……じゃあ、それで……」

赤くなった顔はいつの間にか不健康なほどの白さに戻っている。

だが俺には分かる。

今こいつは心臓ばくばくさせているはずだ。

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