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愛してるって言って!

第1章 【酒と男と双子の弟】

「あんまり、忍に迷惑かけさすなよ」
仕事が終わり、カフェへ向かう途中、静矢は言った。
「最近は一杯だけにしてるから大丈夫だよ。お前もたまには付き合え。忍も喜ぶぞ」
「俺は酒はいい。飯さえ食えればな」
忍の飯は美味い。酒なんて飲んだら勿体ないくらいだ。
忍は、何を作らせても本当に美味く作る上に、センスがあった。イタリアンだけではなく、洋食も、さらっと余りもので作る和食の煮物なんかも本当に上手だ。茜も料理は得意だったから、そこは姉弟で似ていたのだろうと、静矢は思っている。

時刻は夜の8時。準備中の札がかかったガラス扉の向こうから、あたたかい光が漏れている。扉を開けた瞬間、いい香りが漂ってくると、それはたちまち二人の食欲をそそった。
「ん?これは…」
「今日はカレーだな?」
嶋が静矢の後ろで、嬉しそうにそう言った。

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