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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

「凪子、いいよ。気にすんなって。俺はもう大丈夫だから」
「でも…」
「時間が経てば、傷も少しずつ癒えるもんなんだよ」
大嘘だ。そんなの。
静矢の傷が癒えているとしたら、その後遺症は重い。それも、一生付き合っていかなければならないくらいの後遺症だ。それすらないとしたら、今の忍との関係は一体何なのか、という話になってくる。
「だったら静矢、もうそろそろ考えてもいいんじゃないか?」
「何が?」
「再婚だよ」
静矢は驚いていたが、すぐに噴き出して笑った。
「なんだよ、笑い事じゃないぞ」
「だって、急に何かと思うだろ」
「蒔田くん、でも私も…ヒロと同じ様に思うよ」
「凪子…」
忍は黙って店の外の電気を点けた。太陽が傾いて、店の中にはオレンジ色の夕日が差し込んでいる。それに照らされた静矢を見た時、なぜかとても遠い存在に感じた。
「だって、蒔田くんまだ三十じゃない。茜ちゃんだって、蒔田くんには絶対幸せになってもらいたいって思ってるはずだよ」
「あれからもう四年だ。もうそろそろ考えてもバチ当たらないだろ?お前の、新しい人生をさ」
忍は、淹れたばかりのコーヒーと紅茶を出しに、三人が座るテーブルに向かう。
「お待たせ致しました」
忍は、微笑んで二人にそれを出した。我ながら、営業スマイルは完璧だ。
「ありがとう、忍」
静矢も微笑んで会釈をする。だがそれもまた、仕事用のビジネススマイルだった。そんな静矢の笑顔が大好きだったはずなのに、なぜか今日は、無性に腹が立って仕方なかった。

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