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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

その夜。店を閉めた後、千春は完全に不機嫌モードだった。
「何怒ってんだよ」
忍はそう声をかけたが、千春は忍を睨んだ。こんな事は初めてだ。
「怖っ…。何、おれお前に何かした?」
「別に。僕はただ、忍さんに怒ってるんです」
千春はぶすっとしてカウンター席に座る。
「は?なんで」
「あんな事蒔田さんの前で言っちゃって、大丈夫なんですか」
「何、あんな事って」
忍はしらばっくれてケータイを開いた。嶋に、早く千春を迎えに来てくれと、そうメールでもしたい気分だった。
「何ですか今日のあれ。誰か紹介してあげてくださいって。今の恋人は忍さんなのに」
「あぁ、なんだその事?」
忍は、テーブルを拭きながら平然を装った。本当は、千春が怒っている事くらいわかっていた。
「っていうか千春、何か誤解してんじゃない?別におれ、静矢さんとは付き合ってるわけじゃないよ」
「えっ?」
「静矢さんとは、寝てるけどそれだけ。おれ、別に好きとか、付き合ってとか、一度も言われた事ないし」
付き合ってるわけでもなんでもなく、ただ静矢に時々求められ、その度に体を重ねる。その後はまたいつも通りの毎日を送るだけだ。そんなのは付き合ってるなんて言えるはずもなかった。

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