愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
遺書…。茜の…。
まさか。どうしてこんな四年も経って出て来るんだ…。
静矢は不思議に思う一方、靖男が何かと勘違いしているのではないか、とも思った。
「電話、父さん?」
寝室の入り口に忍が立っている。その顔はどこか、不安気だ。
「ああ、今日ちょっと出先ついでに会って来る。良かったら忍も…」
「おれはいい」
「そうか」
そうだよな…。
忍は、昔から父親とはあまりうまくいっていない。学生の頃は、喧嘩しているのをよく見たし、忍本人からもよく話を聞いていた。何かがあった、というわけでもなさそうだが、性格的に合わない、という事もあるようだ。
「遺書って?」
「えっ?」
「遺書って聞こえた。茜の?」
忍は、静矢をじっと見つめて聞いた。やはり、聞こえてしまっていたようだ。
「ああ、見つかったらしい」
「どこから?」
「それはまだ…。でも、渡してくれるって。とりあえず、話を聞いてくる。夕方には戻るから」
忍は、やはり不安そうに、だがしっかり「うん」と一言頷いた。
「静矢さん…」
そろそろ出かけようと言う時になって、忍が改まった様子で声をかける。
「ん?どうした」
「あのね、これ…」
気付くと忍は、手に小さな箱を持っている。
「なんだこれ?」
「えっと、誕生日の、プレゼント…だったんだけど」
「誕生日って、俺の?」
箱を開けると、中に入っていたのはシンプルなデザインのネクタイピンだった。
「用意してくれてたのか。でも、なんで…」
「しょうがないじゃん。本当は、嶋さん達に邪魔される予定も、あんなに酔っぱらうつもりもなかったし…。しかも、あの夜…」
そこまで言うと、忍はとても言いにくそうに俯いてしまった。静矢は、そんな忍が愛おしくなって、思わず微笑む。
そうだな。思えばあの時から、俺達は少しずつすれ違ってしまっていたのかもしれない。全部、俺のせいだ。
「おれ、静矢さんに…謝らなくちゃって思ってたんだ。この前、ひどい事言ったし…」
「忍…」
「本当に、ごめん」
「いや、全部俺のせいだ。お前は悪くない」
「静矢さん、おれ…静矢さんにちゃんと話したい事があるんだ。今日、帰って来てからで、いいから…話、聞いてくれる?」
忍の声が少しだけ震えて聞こえた。
「待ってるから…」
「わかった」
静矢はそう言って頷いてから、忍の頭をくしゃっと撫でた。
まさか。どうしてこんな四年も経って出て来るんだ…。
静矢は不思議に思う一方、靖男が何かと勘違いしているのではないか、とも思った。
「電話、父さん?」
寝室の入り口に忍が立っている。その顔はどこか、不安気だ。
「ああ、今日ちょっと出先ついでに会って来る。良かったら忍も…」
「おれはいい」
「そうか」
そうだよな…。
忍は、昔から父親とはあまりうまくいっていない。学生の頃は、喧嘩しているのをよく見たし、忍本人からもよく話を聞いていた。何かがあった、というわけでもなさそうだが、性格的に合わない、という事もあるようだ。
「遺書って?」
「えっ?」
「遺書って聞こえた。茜の?」
忍は、静矢をじっと見つめて聞いた。やはり、聞こえてしまっていたようだ。
「ああ、見つかったらしい」
「どこから?」
「それはまだ…。でも、渡してくれるって。とりあえず、話を聞いてくる。夕方には戻るから」
忍は、やはり不安そうに、だがしっかり「うん」と一言頷いた。
「静矢さん…」
そろそろ出かけようと言う時になって、忍が改まった様子で声をかける。
「ん?どうした」
「あのね、これ…」
気付くと忍は、手に小さな箱を持っている。
「なんだこれ?」
「えっと、誕生日の、プレゼント…だったんだけど」
「誕生日って、俺の?」
箱を開けると、中に入っていたのはシンプルなデザインのネクタイピンだった。
「用意してくれてたのか。でも、なんで…」
「しょうがないじゃん。本当は、嶋さん達に邪魔される予定も、あんなに酔っぱらうつもりもなかったし…。しかも、あの夜…」
そこまで言うと、忍はとても言いにくそうに俯いてしまった。静矢は、そんな忍が愛おしくなって、思わず微笑む。
そうだな。思えばあの時から、俺達は少しずつすれ違ってしまっていたのかもしれない。全部、俺のせいだ。
「おれ、静矢さんに…謝らなくちゃって思ってたんだ。この前、ひどい事言ったし…」
「忍…」
「本当に、ごめん」
「いや、全部俺のせいだ。お前は悪くない」
「静矢さん、おれ…静矢さんにちゃんと話したい事があるんだ。今日、帰って来てからで、いいから…話、聞いてくれる?」
忍の声が少しだけ震えて聞こえた。
「待ってるから…」
「わかった」
静矢はそう言って頷いてから、忍の頭をくしゃっと撫でた。