愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
『毒虫』
茜が亡くなる前日、その日は本当に寒かった。夜、静矢が駆け込むように家へ帰ると、茜はリビングのソファに座ってココアを飲みながら、本を読んでいた。芯から凍える様な寒い日の夜には、茜は決まってそうしていた。面白い事に、最高気温が10度に満たないと、必ず飲みたくなるようで、静矢は、帰って来てココアを飲む茜を見ると、「あぁ、今日も寒かったんだな」と、思うのだった。
「ただいま」
静矢が声をかけると、茜は本を閉じて微笑んだ。
「おかえり。今、夕飯温めるわね」
茜は、本を読む事が好きで、いつも様々なジャンルの本を読んでいたが、結婚してしばらくした頃から、茜が読む本は、なぜか皆重い内容のものが多くなっていた。今となってはそれも理解できるが、当時は全く訳がわからず、嫌な顔をしてしまう事も多かった。そしてその日も、それは例外ではなかった。
「またそんな本読んでる」
静矢は茜が読んでいた本のタイトルを見て、眉をしかめた。
「あら、これは傑作よ」
台所で夕飯のシチューが入った鍋を温めながら、茜は笑みを浮かべている。
「『変身』だろ…?フランツ・カフカの」
俺は苦手だ…。
茜が読んでいたのは、フランツ・カフカ著書の『変身』だった。静矢も、茜に勧められた小説はいくつか読んだ記憶があったが、その中でも『変身』は、ラストがとにかく衝撃的だった。
茜が亡くなる前日、その日は本当に寒かった。夜、静矢が駆け込むように家へ帰ると、茜はリビングのソファに座ってココアを飲みながら、本を読んでいた。芯から凍える様な寒い日の夜には、茜は決まってそうしていた。面白い事に、最高気温が10度に満たないと、必ず飲みたくなるようで、静矢は、帰って来てココアを飲む茜を見ると、「あぁ、今日も寒かったんだな」と、思うのだった。
「ただいま」
静矢が声をかけると、茜は本を閉じて微笑んだ。
「おかえり。今、夕飯温めるわね」
茜は、本を読む事が好きで、いつも様々なジャンルの本を読んでいたが、結婚してしばらくした頃から、茜が読む本は、なぜか皆重い内容のものが多くなっていた。今となってはそれも理解できるが、当時は全く訳がわからず、嫌な顔をしてしまう事も多かった。そしてその日も、それは例外ではなかった。
「またそんな本読んでる」
静矢は茜が読んでいた本のタイトルを見て、眉をしかめた。
「あら、これは傑作よ」
台所で夕飯のシチューが入った鍋を温めながら、茜は笑みを浮かべている。
「『変身』だろ…?フランツ・カフカの」
俺は苦手だ…。
茜が読んでいたのは、フランツ・カフカ著書の『変身』だった。静矢も、茜に勧められた小説はいくつか読んだ記憶があったが、その中でも『変身』は、ラストがとにかく衝撃的だった。