
愛してるって言って!
第1章 【酒と男と双子の弟】
「どうです?お仕事の方は。順調ですか?」
カフェのマスターが二人に声をかけた。
「もうすっかり秋ですから、忙しいでしょう」
そう言いながら、眉を下げて笑うその顔には人の好さが滲み出ている。マスターはグラスを二つ取り出し、氷を三つか四つほど入れて水を注いだ後、中に輪切りされたレモンを入れ、それをコースターに乗せて二人に差し出した。
「そうですね。まぁでも、おかげさまでなんとかやってます」
静矢は、嶋と顔を見合わせて頷き、そう答えた。那須の秋は忙しい。夏場は夏場で避暑地として観光客で賑わうが、秋が深まり、山の紅葉が始まると、寧ろ夏場よりもその賑わいは増していた。
「それは良かった。忍くん、蒔田さんの事心配してましたよ」
「あ…そうですか」
そうだよな…。
正直な事を言えば確かに、その自覚がないわけではない。
「お義兄さん思いですよねぇ。私も上に歳の離れた兄がいますが、本当に気難しい人で…。昔から気が合わなくて、大人になってからはほとんど会う事もなくなりましたよ。まぁ、お互いもう四十過ぎですから、喧嘩こそありませんが、仲の良い兄弟っていうのは、羨ましいもんです」
マスターはそう言って苦笑いをした。
「マスター、兄弟なんてもんはそうなんですよ。寧ろ、そうでなきゃいけない。男同士というだけで、自然界ではライバルですからね」
嶋が得意気になって話に入ってくる。
「おい、それはライオンかなんかの話か?」
「いや、自然界で暮らす、人間という動物の話だよ」
「まぁた嶋さんが変な話してる」
忍は、二人分の食事を持って厨房から出て来るなり、呆れたような目で嶋を見て言った。
「変な話なもんか。おっ、やっぱりカレーだったな」
トレーに乗った料理を見て、嶋は目を輝かせる。
「ただのカレーじゃないよ。忍の特製、トマトカレー!」
「トマト…?」
静矢は思わず聞き返す。
おいおい、大丈夫なのか?それ。
「なんでカレーにトマトを入れる事になったんだ?」
そのカレーを見て、静矢は眉間にしわを寄せた。
カフェのマスターが二人に声をかけた。
「もうすっかり秋ですから、忙しいでしょう」
そう言いながら、眉を下げて笑うその顔には人の好さが滲み出ている。マスターはグラスを二つ取り出し、氷を三つか四つほど入れて水を注いだ後、中に輪切りされたレモンを入れ、それをコースターに乗せて二人に差し出した。
「そうですね。まぁでも、おかげさまでなんとかやってます」
静矢は、嶋と顔を見合わせて頷き、そう答えた。那須の秋は忙しい。夏場は夏場で避暑地として観光客で賑わうが、秋が深まり、山の紅葉が始まると、寧ろ夏場よりもその賑わいは増していた。
「それは良かった。忍くん、蒔田さんの事心配してましたよ」
「あ…そうですか」
そうだよな…。
正直な事を言えば確かに、その自覚がないわけではない。
「お義兄さん思いですよねぇ。私も上に歳の離れた兄がいますが、本当に気難しい人で…。昔から気が合わなくて、大人になってからはほとんど会う事もなくなりましたよ。まぁ、お互いもう四十過ぎですから、喧嘩こそありませんが、仲の良い兄弟っていうのは、羨ましいもんです」
マスターはそう言って苦笑いをした。
「マスター、兄弟なんてもんはそうなんですよ。寧ろ、そうでなきゃいけない。男同士というだけで、自然界ではライバルですからね」
嶋が得意気になって話に入ってくる。
「おい、それはライオンかなんかの話か?」
「いや、自然界で暮らす、人間という動物の話だよ」
「まぁた嶋さんが変な話してる」
忍は、二人分の食事を持って厨房から出て来るなり、呆れたような目で嶋を見て言った。
「変な話なもんか。おっ、やっぱりカレーだったな」
トレーに乗った料理を見て、嶋は目を輝かせる。
「ただのカレーじゃないよ。忍の特製、トマトカレー!」
「トマト…?」
静矢は思わず聞き返す。
おいおい、大丈夫なのか?それ。
「なんでカレーにトマトを入れる事になったんだ?」
そのカレーを見て、静矢は眉間にしわを寄せた。
