愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
『遠い星みたいだった』
ケータイを持ってきていて良かった、と思ったのはもう随分歩いてからだった。こうして雪道を歩いていると、まるで、身体の感覚がなくなってしまった様だ。もうこのままどうにでもなって、とても遠くまで行ってしまいたかった。
「寒ぃ…」
そう声に出すと、余計に寒くなって来て、忍は近くのコンビニまでひたすら歩く。頭上には、黒い絨毯に宝石を散りばめた様な星空が広がっていた。
「遠いな…」
忍は、夜空に向かって手を伸ばす。忍は、届くはずのない星を見つめ、ため息をついた。
そうだ。ちょうどこんな感じだ。おれは、あの人には届かなかった…。
「あー無理!本っ当に寒い!」
背中に寒気が走り、忍はブルッと身体を震わせた。真冬の那須で夜、薄着のまま外を出歩くなど、普通はあり得ない。せめて上着を着て来るんだった、と忍はそれだけを少し後悔した。
「もしもし、嶋さん?」
忍は、歩きながら電話をかける。一回目は出なかった。もしかしたら今日は何か用事があるか、まだ仕事中で出ないかもしれない、とも思った。だが電話をかけて助けを乞う相手は、今、忍には一人しか思い浮かばなかった。
「おう、忍か。どうした」
やっと電話が繋がって、電話口から聞こえてくる声を聞いて、忍は嶋と話すのが久しぶりだと気付く。本当は、嶋の声を聞いた時、忍は死ぬほどホッとした。だが、すぐに平然を装って言う。
「どうしたって事もないんだけどさ。ねぇ、今日泊めてほしいんだけど」
「はぁ?」
「だから、今日。泊めてって」
「何言ってんだお前?オレと浮気でもするつもりか」
嶋のいつもの冗談を聞いて、忍はため息をつく。
「別におれ、義兄さんとは付き合ってたわけじゃないけど」
「あ?何?」
忍が少しやけになって言った言葉は、嶋には聞こえていない様だった。
「とにかく早く迎えに来てよ!寒いんだから!」
「寒いって…お前今どこにいるんだよ?」
「もうちょっとでコンビニ着くとこ」
「どこの」
「一軒茶屋交差点の」
「何だってそんなとこにいるんだ、バカかお前!中で待ってろ!埋もれんなよ!」
すぐに電話は切れ、嶋は車をすっ飛ばしてコンビニの駐車場に来た。
ケータイを持ってきていて良かった、と思ったのはもう随分歩いてからだった。こうして雪道を歩いていると、まるで、身体の感覚がなくなってしまった様だ。もうこのままどうにでもなって、とても遠くまで行ってしまいたかった。
「寒ぃ…」
そう声に出すと、余計に寒くなって来て、忍は近くのコンビニまでひたすら歩く。頭上には、黒い絨毯に宝石を散りばめた様な星空が広がっていた。
「遠いな…」
忍は、夜空に向かって手を伸ばす。忍は、届くはずのない星を見つめ、ため息をついた。
そうだ。ちょうどこんな感じだ。おれは、あの人には届かなかった…。
「あー無理!本っ当に寒い!」
背中に寒気が走り、忍はブルッと身体を震わせた。真冬の那須で夜、薄着のまま外を出歩くなど、普通はあり得ない。せめて上着を着て来るんだった、と忍はそれだけを少し後悔した。
「もしもし、嶋さん?」
忍は、歩きながら電話をかける。一回目は出なかった。もしかしたら今日は何か用事があるか、まだ仕事中で出ないかもしれない、とも思った。だが電話をかけて助けを乞う相手は、今、忍には一人しか思い浮かばなかった。
「おう、忍か。どうした」
やっと電話が繋がって、電話口から聞こえてくる声を聞いて、忍は嶋と話すのが久しぶりだと気付く。本当は、嶋の声を聞いた時、忍は死ぬほどホッとした。だが、すぐに平然を装って言う。
「どうしたって事もないんだけどさ。ねぇ、今日泊めてほしいんだけど」
「はぁ?」
「だから、今日。泊めてって」
「何言ってんだお前?オレと浮気でもするつもりか」
嶋のいつもの冗談を聞いて、忍はため息をつく。
「別におれ、義兄さんとは付き合ってたわけじゃないけど」
「あ?何?」
忍が少しやけになって言った言葉は、嶋には聞こえていない様だった。
「とにかく早く迎えに来てよ!寒いんだから!」
「寒いって…お前今どこにいるんだよ?」
「もうちょっとでコンビニ着くとこ」
「どこの」
「一軒茶屋交差点の」
「何だってそんなとこにいるんだ、バカかお前!中で待ってろ!埋もれんなよ!」
すぐに電話は切れ、嶋は車をすっ飛ばしてコンビニの駐車場に来た。