愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
『支えられるのは』
「茜はずるいよ…」
忍は湯船に浸かりながら、そうポツリと呟く。茜と忍は、昔からお互いの感情が何となくわかってしまう事が度々あった。それはやはり、双子ならではの感覚だと言っていいだろう。だが、茜が自殺を考えていた事は、当時、忍には全くわからなかった。
「なんとかしてよ。全部茜のせいなんだから…」
忍は、湯船の縁に顔を乗せて、そんな憎まれ口を叩いた。
忍が居酒屋のバイトで静矢に初めて会った日、静矢を好きだと思ったと同時に、忍の脳裏には、すぐ茜の事が浮かんだ。それを確かめるように、静矢と茜を見澄ました忍の予想は、見事に的中する。
「やっぱか…」
茜と忍は昔から好きな人が被る。その為、忍は自分好みの人には、あまり近づかない癖がついていた。それは、自分が好きな気持ちを募らせても、同性愛者の忍にとって、そのライバルが茜であり、女性である限り、やはり自分の想いが叶う可能性は皆無だったからだ。それに加えて、茜とは、敢えて恋愛の話はしない事にしていた。向こうもきっとこっちの気持ちなんてわかっていると思うし、答え合わせをしたところで、結果は変わるはずもない。ただ面倒くさくなるだけだ、と忍は思っていた。
けれど、運がいいのか悪いのか、忍の思惑とは関係なく、忍と静矢の接点は皮肉なほど増えていった。忍の教育係であるが故に、静矢は、常に忍のそばにいるし、シフトも一緒になる事が多い。その時間を重ねれば重ねていくほど、忍の気持ちはどんどん膨らんで、気が付いた時にはもう戻れないところまで、その想いを募らせてしまっていた。
だが、そんな日が当たり前の様に続いていたある日。
話があると言って、忍は茜に外へ連れ出された。真夏の暑い日だった。夜中だというのに、むせるような湿気が空気を湿らせ、外は完全に天然のサウナ状態だった。
「話って何?暑いんだけど!」
少し先を歩く茜に、忍は苛立って聞いた。
「ねぇ!話なら部屋ですりゃいいでしょ!」
「忍」
「何だよ?」
茜は、立ち止まって振り返った。その目が真っすぐ刺すように忍を見つめている。嫌な予感がした。
「忍は、私を恨んでる?」
「は?」
急に何を言いだしたかと思ったが、忍にはなんとなくその意味がわかってしまうのだった。
「茜はずるいよ…」
忍は湯船に浸かりながら、そうポツリと呟く。茜と忍は、昔からお互いの感情が何となくわかってしまう事が度々あった。それはやはり、双子ならではの感覚だと言っていいだろう。だが、茜が自殺を考えていた事は、当時、忍には全くわからなかった。
「なんとかしてよ。全部茜のせいなんだから…」
忍は、湯船の縁に顔を乗せて、そんな憎まれ口を叩いた。
忍が居酒屋のバイトで静矢に初めて会った日、静矢を好きだと思ったと同時に、忍の脳裏には、すぐ茜の事が浮かんだ。それを確かめるように、静矢と茜を見澄ました忍の予想は、見事に的中する。
「やっぱか…」
茜と忍は昔から好きな人が被る。その為、忍は自分好みの人には、あまり近づかない癖がついていた。それは、自分が好きな気持ちを募らせても、同性愛者の忍にとって、そのライバルが茜であり、女性である限り、やはり自分の想いが叶う可能性は皆無だったからだ。それに加えて、茜とは、敢えて恋愛の話はしない事にしていた。向こうもきっとこっちの気持ちなんてわかっていると思うし、答え合わせをしたところで、結果は変わるはずもない。ただ面倒くさくなるだけだ、と忍は思っていた。
けれど、運がいいのか悪いのか、忍の思惑とは関係なく、忍と静矢の接点は皮肉なほど増えていった。忍の教育係であるが故に、静矢は、常に忍のそばにいるし、シフトも一緒になる事が多い。その時間を重ねれば重ねていくほど、忍の気持ちはどんどん膨らんで、気が付いた時にはもう戻れないところまで、その想いを募らせてしまっていた。
だが、そんな日が当たり前の様に続いていたある日。
話があると言って、忍は茜に外へ連れ出された。真夏の暑い日だった。夜中だというのに、むせるような湿気が空気を湿らせ、外は完全に天然のサウナ状態だった。
「話って何?暑いんだけど!」
少し先を歩く茜に、忍は苛立って聞いた。
「ねぇ!話なら部屋ですりゃいいでしょ!」
「忍」
「何だよ?」
茜は、立ち止まって振り返った。その目が真っすぐ刺すように忍を見つめている。嫌な予感がした。
「忍は、私を恨んでる?」
「は?」
急に何を言いだしたかと思ったが、忍にはなんとなくその意味がわかってしまうのだった。