愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
「忍には言っておきたかったの」
やめろ…。
「きっと…隠せないって思うから」
「やめろよ!」
忍が声を荒げても、茜は全く動じなかった。さすがは双子の姉だ。自分の事をよくわかっている。そう思った。
「っていうかさ、おれ別に静矢さんの事本気で好きとかじゃないから。ちょっといいなって思ってただけ」
そうだ。最初は本当に、素敵だなって、思ってただけだった。
「遊べそうかなって思ってたけど、茜に取られちゃ仕方ないね」
わざと明るい声を出して、おどけた笑顔で忍は言う。
忍の心は、自分自身の言葉でズタズタに引き裂かれていた。そんな言葉の後には、ただ空しさだけが残り、それが痛みを紛らわせている様だった。
「忍は、本当にそれでいいの?」
「別に?いいって。茜、おめでとう」
そう言って、精一杯笑った忍を、茜は駆け寄って抱きしめた。
忍はその夜、部屋で声を殺して泣いた。隣の部屋にいる、茜には絶対聞こえてほしくなかった。
忍は、風呂の中で深いため息をつく。今思い出しても、あの夜は本当に辛かった。
「あんな思いまでさせたくせに、さっさと死んじゃうなんて、本当ムカつく…」
風呂から出る。考え込んでつい、長く入り過ぎてしまい、もう少しでのぼせるところだった。
茜が自殺したと聞いた時、忍は本当に腹が立った。静矢を傷つけ、一人ぼっちにさせた茜を、正直思いっきり殴ってやりたかった。病を抱えていたとわかった時は、静矢の事があって、わざと茜と距離を置いていた事を後悔したが、それでも、自殺という選択をした茜を、静矢に深い心の傷を負わせた茜を、忍は許せなかった。
最初は、静矢を支えたくて、そんな茜の代わりにでもなれたらいいと思っていた。だが、それは誰にもできない。だからもうこれ以上、こんな関係も続けられない。忍は、やっとその事に気付き始めていた。
静矢を支えられるのは、茜の代わりになる忍ではなく、静矢が本気で愛せる誰かなのだ。
それはきっと、おれじゃない…。
脱衣所の鏡に、忍の顔が映る。その顔は、今こうして自分で見ても、本当に茜にそっくりだった。
「茜のバカ…」
忍は、鏡に向かってまた、悪態をついた。
やめろ…。
「きっと…隠せないって思うから」
「やめろよ!」
忍が声を荒げても、茜は全く動じなかった。さすがは双子の姉だ。自分の事をよくわかっている。そう思った。
「っていうかさ、おれ別に静矢さんの事本気で好きとかじゃないから。ちょっといいなって思ってただけ」
そうだ。最初は本当に、素敵だなって、思ってただけだった。
「遊べそうかなって思ってたけど、茜に取られちゃ仕方ないね」
わざと明るい声を出して、おどけた笑顔で忍は言う。
忍の心は、自分自身の言葉でズタズタに引き裂かれていた。そんな言葉の後には、ただ空しさだけが残り、それが痛みを紛らわせている様だった。
「忍は、本当にそれでいいの?」
「別に?いいって。茜、おめでとう」
そう言って、精一杯笑った忍を、茜は駆け寄って抱きしめた。
忍はその夜、部屋で声を殺して泣いた。隣の部屋にいる、茜には絶対聞こえてほしくなかった。
忍は、風呂の中で深いため息をつく。今思い出しても、あの夜は本当に辛かった。
「あんな思いまでさせたくせに、さっさと死んじゃうなんて、本当ムカつく…」
風呂から出る。考え込んでつい、長く入り過ぎてしまい、もう少しでのぼせるところだった。
茜が自殺したと聞いた時、忍は本当に腹が立った。静矢を傷つけ、一人ぼっちにさせた茜を、正直思いっきり殴ってやりたかった。病を抱えていたとわかった時は、静矢の事があって、わざと茜と距離を置いていた事を後悔したが、それでも、自殺という選択をした茜を、静矢に深い心の傷を負わせた茜を、忍は許せなかった。
最初は、静矢を支えたくて、そんな茜の代わりにでもなれたらいいと思っていた。だが、それは誰にもできない。だからもうこれ以上、こんな関係も続けられない。忍は、やっとその事に気付き始めていた。
静矢を支えられるのは、茜の代わりになる忍ではなく、静矢が本気で愛せる誰かなのだ。
それはきっと、おれじゃない…。
脱衣所の鏡に、忍の顔が映る。その顔は、今こうして自分で見ても、本当に茜にそっくりだった。
「茜のバカ…」
忍は、鏡に向かってまた、悪態をついた。