愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
「そんな言葉で、あいつが今更納得できると思ってんのか!?」
こいつは、思っていたより遥かにクソ野郎だ!
嶋は、こみ上げる怒りを必死に抑え、拳をぐっと握る。
「あいつはな…お前をずっと好きだったのに、姉ちゃんとお前の為に身を引いて、それでも諦めらんなくて、何年も想い続けてきたんだ!姉ちゃんが死んで、沈みっぱなしのお前を支えたくて、気持ちを隠したまま必死でそばにいたのに、その忍に手を出しておいて、そうしたかったからだ!?ふざけんな!」
「そうだ…。俺が、身勝手だった」
静矢は、身体を起こしてそう言った。
「あぁ、そうだ!お前は身勝手だ!でもそうなったのは、お前があいつに惚れてるからじゃねえのか!?」
静矢は咳をして、雪の上に唾を吐く。玄関の灯りで照らされた雪の上で、それはまるで絵の具の様に、鮮やかな赤い色をしていた。
「そうだな…」
「だったらそう言ってやれよ!忍は、お前に言って欲しいだけなんだ!お前が好きだって、お前に惚れてるんだって!蒔田、お前は怖いんだろ。嫁さんの時みたいに、自分が何も知らないまま、一人置いてきぼりにされるかもしれないって。だけど、その怖さも、痛みも、あいつはみんなわかってる!それがわかるのは、あいつだからだ!」
嶋のそんな言葉に、静矢は何かに気付いたように、ため息をついた。
「嶋…」
「本当なら、オレが守ってやりたかった。だけど、あいつはお前じゃなきゃダメなんだ。お前だってそうなんだろ」
その時。玄関のドアが開いた。
「静矢さん…!」
二人の声が聞こえたのか、忍が飛び出してきて静矢に駆け寄る。ところが、静矢の口元に血が滲んでいるのを見た途端に、忍はギョッとして、そこを覗き込んだ。
「ちょっ…静矢さん…!血が出て…!」」
「そういう事だ、蒔田。わかったらさっさと忍を連れて帰れ」
「えっ…ちょっと!嶋さん!?」
嶋の背中に、忍の声が飛んで来る。だが嶋は、それに振り向く事なく、家の中へ入った。
玄関に入ると、不安そうな顔をした千春が立っていた。
「嶋さん…」
嶋は、目を伏せる。蒔田を殴った右手をグッと握りしめ、力なく開く。それから顔を上げ、千春に微笑んで見せた。
「ただいま」
嶋がそう言うと、千春はたちまち泣きそうな顔をした。嶋は千春の髪をくしゃりと撫でる。
「泣くな。オレが泣けないだろ」
こいつは、思っていたより遥かにクソ野郎だ!
嶋は、こみ上げる怒りを必死に抑え、拳をぐっと握る。
「あいつはな…お前をずっと好きだったのに、姉ちゃんとお前の為に身を引いて、それでも諦めらんなくて、何年も想い続けてきたんだ!姉ちゃんが死んで、沈みっぱなしのお前を支えたくて、気持ちを隠したまま必死でそばにいたのに、その忍に手を出しておいて、そうしたかったからだ!?ふざけんな!」
「そうだ…。俺が、身勝手だった」
静矢は、身体を起こしてそう言った。
「あぁ、そうだ!お前は身勝手だ!でもそうなったのは、お前があいつに惚れてるからじゃねえのか!?」
静矢は咳をして、雪の上に唾を吐く。玄関の灯りで照らされた雪の上で、それはまるで絵の具の様に、鮮やかな赤い色をしていた。
「そうだな…」
「だったらそう言ってやれよ!忍は、お前に言って欲しいだけなんだ!お前が好きだって、お前に惚れてるんだって!蒔田、お前は怖いんだろ。嫁さんの時みたいに、自分が何も知らないまま、一人置いてきぼりにされるかもしれないって。だけど、その怖さも、痛みも、あいつはみんなわかってる!それがわかるのは、あいつだからだ!」
嶋のそんな言葉に、静矢は何かに気付いたように、ため息をついた。
「嶋…」
「本当なら、オレが守ってやりたかった。だけど、あいつはお前じゃなきゃダメなんだ。お前だってそうなんだろ」
その時。玄関のドアが開いた。
「静矢さん…!」
二人の声が聞こえたのか、忍が飛び出してきて静矢に駆け寄る。ところが、静矢の口元に血が滲んでいるのを見た途端に、忍はギョッとして、そこを覗き込んだ。
「ちょっ…静矢さん…!血が出て…!」」
「そういう事だ、蒔田。わかったらさっさと忍を連れて帰れ」
「えっ…ちょっと!嶋さん!?」
嶋の背中に、忍の声が飛んで来る。だが嶋は、それに振り向く事なく、家の中へ入った。
玄関に入ると、不安そうな顔をした千春が立っていた。
「嶋さん…」
嶋は、目を伏せる。蒔田を殴った右手をグッと握りしめ、力なく開く。それから顔を上げ、千春に微笑んで見せた。
「ただいま」
嶋がそう言うと、千春はたちまち泣きそうな顔をした。嶋は千春の髪をくしゃりと撫でる。
「泣くな。オレが泣けないだろ」