愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
『愛してるって言って』
「信じらんない…。いい歳こいて二人とも中学生みたいな喧嘩するんだもん…。とりあえず、後はこれでほっぺた冷やしといて」
忍は、静矢の傷を手当しながら、口を尖らせてぼやく。
怪我をした静矢を助手席に乗せ、家まで車を運転して帰って来た忍は、明るい電気の下で静矢の傷を見て驚いた。それ程腫れてはいなかったが、唇の端が切れてかなり出血していた。仕事柄、火傷や、包丁での切り傷なんかは見慣れているが、こんな傷は少し前に流行っていたヤンキー映画か、ドラマでしか見た事がなかった。
「痛そう…。病院に行くとね、外傷には必ず抗生物質を飲み薬で出されるんだけど、絶対飲まなきゃダメってわけじゃないらしいよ」
そんな風に平然を装っていても、忍の心臓はとても正直に、うるさく鳴り続けている。
「もういい。大丈夫だ、これくらい放っとけば」
「待って、口の中も切れてない?」
「いいって、大丈夫だから」
「もう…。でも、後は自然にしとく他なさそうだね」
グーでやるんだもんな…。嶋さんって本当に、見かけに寄らないとこあるから…。
ふうっと一つ息をついて、救急箱を片付ける忍は、視線を感じて顔を上げた。その真っすぐな瞳に吸い込まれそうになって、思わずドキッとする。
嶋と静矢が、家の前で何を話していたのかは、忍にも、もちろん千春にも聞こえなかった。だが、嶋の苛立った声が聞こえてきた瞬間、忍は胸が張り裂けそうになった。
『お前は、あいつに惚れてるんじゃないのか!?』
そう確かに聞こえた時、忍はつい期待してしまった。単純すぎて情けなくなるが、それが本当なら…と自分に都合よく考えてしまう。
「どうかした?」
静矢に見つめられ、忍は堪らなくなって目を背けて言った。
そんな目で見られたら、諦めなきゃいけないってわかっても、諦めきれない…。
いつまでもこんな調子で、静矢への気持ちを完全に諦めて、本当に義理の弟になれるのは、一体何年先なのだろうと考えると、忍は気が遠くなるようだった。
「信じらんない…。いい歳こいて二人とも中学生みたいな喧嘩するんだもん…。とりあえず、後はこれでほっぺた冷やしといて」
忍は、静矢の傷を手当しながら、口を尖らせてぼやく。
怪我をした静矢を助手席に乗せ、家まで車を運転して帰って来た忍は、明るい電気の下で静矢の傷を見て驚いた。それ程腫れてはいなかったが、唇の端が切れてかなり出血していた。仕事柄、火傷や、包丁での切り傷なんかは見慣れているが、こんな傷は少し前に流行っていたヤンキー映画か、ドラマでしか見た事がなかった。
「痛そう…。病院に行くとね、外傷には必ず抗生物質を飲み薬で出されるんだけど、絶対飲まなきゃダメってわけじゃないらしいよ」
そんな風に平然を装っていても、忍の心臓はとても正直に、うるさく鳴り続けている。
「もういい。大丈夫だ、これくらい放っとけば」
「待って、口の中も切れてない?」
「いいって、大丈夫だから」
「もう…。でも、後は自然にしとく他なさそうだね」
グーでやるんだもんな…。嶋さんって本当に、見かけに寄らないとこあるから…。
ふうっと一つ息をついて、救急箱を片付ける忍は、視線を感じて顔を上げた。その真っすぐな瞳に吸い込まれそうになって、思わずドキッとする。
嶋と静矢が、家の前で何を話していたのかは、忍にも、もちろん千春にも聞こえなかった。だが、嶋の苛立った声が聞こえてきた瞬間、忍は胸が張り裂けそうになった。
『お前は、あいつに惚れてるんじゃないのか!?』
そう確かに聞こえた時、忍はつい期待してしまった。単純すぎて情けなくなるが、それが本当なら…と自分に都合よく考えてしまう。
「どうかした?」
静矢に見つめられ、忍は堪らなくなって目を背けて言った。
そんな目で見られたら、諦めなきゃいけないってわかっても、諦めきれない…。
いつまでもこんな調子で、静矢への気持ちを完全に諦めて、本当に義理の弟になれるのは、一体何年先なのだろうと考えると、忍は気が遠くなるようだった。