
愛してるって言って!
第1章 【酒と男と双子の弟】
「あー気持ちいい。もうすっかり秋だね」
コーヒーをほんの少しずつ口にしながら、忍は言う。
ベランダに続く窓から、涼しく、乾いた風が部屋に入って来て、それは、風呂上がりの、少し火照った忍の身体を、心地よく冷やしていった。それと共に、秋の虫の声がひっきりなしに聞こえている。
「ここんとこ、急に涼しくなったな」
「うん」
「少しは慣れたか?」
「だいぶね。道も随分覚えたし。それに、人らしい生活ができるようになったよ」
「人らしい、か。前の店、大変だったみたいだもんな」
「忙しい店だったからね。でも、そのおかげで色々、勉強できたっていうのもあるんだけどさ」
都内にいた頃、働いていた前の店は、本当に忙しい店だった。予約は週末には常にいっぱいで、毎日が戦争の様だった。もちろん、給料もそれなりにもらえはしたが、それを使える時間はないに等しい。休みは週に一日か、取れて二日。連休なんてものはあり得ない。休憩時間も、満足に取る事ができないが、あまりに忙しいせいか、腹も空かないのだ。ボーナスも出るし、やりがいはあったが、ずっと続けていける職場ではない事は、確かだった。
コーヒーをほんの少しずつ口にしながら、忍は言う。
ベランダに続く窓から、涼しく、乾いた風が部屋に入って来て、それは、風呂上がりの、少し火照った忍の身体を、心地よく冷やしていった。それと共に、秋の虫の声がひっきりなしに聞こえている。
「ここんとこ、急に涼しくなったな」
「うん」
「少しは慣れたか?」
「だいぶね。道も随分覚えたし。それに、人らしい生活ができるようになったよ」
「人らしい、か。前の店、大変だったみたいだもんな」
「忙しい店だったからね。でも、そのおかげで色々、勉強できたっていうのもあるんだけどさ」
都内にいた頃、働いていた前の店は、本当に忙しい店だった。予約は週末には常にいっぱいで、毎日が戦争の様だった。もちろん、給料もそれなりにもらえはしたが、それを使える時間はないに等しい。休みは週に一日か、取れて二日。連休なんてものはあり得ない。休憩時間も、満足に取る事ができないが、あまりに忙しいせいか、腹も空かないのだ。ボーナスも出るし、やりがいはあったが、ずっと続けていける職場ではない事は、確かだった。
