
愛してるって言って!
第1章 【酒と男と双子の弟】
「あーうまいっ!」
「相変わらず、うまそうに飲むな」
「久しぶりだしね!」
忍は、那須に来てからあまり酒を飲まなくなった。昔はよく一緒に、何軒もはしごして飲み歩いたものだったが、今では、量も頻度も減っていた。
「いつも一緒に飲めなくて悪いな」
「別に大丈夫。飲みたきゃ一人でも飲むよ」
「でも、飲む頻度は落ちたろ」
こっちに来てからは特に。
静矢は、ひょっとしてそれが、自分が酒をやめたせいではないかと思う時があった。だが、忍はけらけら笑って言う。
「そりゃもう昔みたいに、バカな飲み方はしないよ」
そういえば学生の頃は、ペースを考えずに勢いだけで好き勝手に飲んでいたっけ。
「忍、自覚あったのか」
「一応ね。でも義兄さんだって、人の事言えないくらい飲んでたよ」
静矢は思わず笑った。
「確かに学生の頃はよく飲んだよな。お前はどこで飲んでもよく潰れててさ」
「そうそう!義兄さんの方が絶対強いんだよね。おれの方がいつも早く出来上がっちゃって、顔もすぐ赤くなるし。おれ、あの頃義兄さんが羨ましかったな」
「忍は色が白いからわかりやすいんだよな。やめとけって言うのに、真っ赤な顔してショットとか飲んだりしてさ。だけど次の日ケロッとした顔でバイト来てた日には本当、笑ったよ」
「そういや義兄さんもさ、一度だけお店で寝ちゃって、全然起きなかった事あったよね」
「そうだっけ?」
こんな風に昔の事を話すのは久しぶりだ。昔を変に構えずに話せるのは、やっぱり忍だからだろうと、静矢は思う。腫れ物に触られるような事も、必要以上に心配される事もない。単純に、純粋に楽しんで、しかも安心して話ができる。そんな存在は、今となっては忍の他にはいなかった。
二人の話は、料理が運ばれてきてからも続いた。忍が話すのは、店に来た少し変わった客の話、失敗した料理の話、実は少し抜けているマスターの話。静矢が話すのは、美術館スタッフのくせにうるさくて仕方ない嶋の話、挙式の見学に来た幸せそうなカップルの話、女性の先輩プランナーが婚活に励んでいる話。もうそれは聞いた、とか、そういえばそんな事もあったとか言いながら、時間が過ぎるのはあっという間だった。結局二人が席を立った時、時計の針は既に夜の十一時を回っていた。
「相変わらず、うまそうに飲むな」
「久しぶりだしね!」
忍は、那須に来てからあまり酒を飲まなくなった。昔はよく一緒に、何軒もはしごして飲み歩いたものだったが、今では、量も頻度も減っていた。
「いつも一緒に飲めなくて悪いな」
「別に大丈夫。飲みたきゃ一人でも飲むよ」
「でも、飲む頻度は落ちたろ」
こっちに来てからは特に。
静矢は、ひょっとしてそれが、自分が酒をやめたせいではないかと思う時があった。だが、忍はけらけら笑って言う。
「そりゃもう昔みたいに、バカな飲み方はしないよ」
そういえば学生の頃は、ペースを考えずに勢いだけで好き勝手に飲んでいたっけ。
「忍、自覚あったのか」
「一応ね。でも義兄さんだって、人の事言えないくらい飲んでたよ」
静矢は思わず笑った。
「確かに学生の頃はよく飲んだよな。お前はどこで飲んでもよく潰れててさ」
「そうそう!義兄さんの方が絶対強いんだよね。おれの方がいつも早く出来上がっちゃって、顔もすぐ赤くなるし。おれ、あの頃義兄さんが羨ましかったな」
「忍は色が白いからわかりやすいんだよな。やめとけって言うのに、真っ赤な顔してショットとか飲んだりしてさ。だけど次の日ケロッとした顔でバイト来てた日には本当、笑ったよ」
「そういや義兄さんもさ、一度だけお店で寝ちゃって、全然起きなかった事あったよね」
「そうだっけ?」
こんな風に昔の事を話すのは久しぶりだ。昔を変に構えずに話せるのは、やっぱり忍だからだろうと、静矢は思う。腫れ物に触られるような事も、必要以上に心配される事もない。単純に、純粋に楽しんで、しかも安心して話ができる。そんな存在は、今となっては忍の他にはいなかった。
二人の話は、料理が運ばれてきてからも続いた。忍が話すのは、店に来た少し変わった客の話、失敗した料理の話、実は少し抜けているマスターの話。静矢が話すのは、美術館スタッフのくせにうるさくて仕方ない嶋の話、挙式の見学に来た幸せそうなカップルの話、女性の先輩プランナーが婚活に励んでいる話。もうそれは聞いた、とか、そういえばそんな事もあったとか言いながら、時間が過ぎるのはあっという間だった。結局二人が席を立った時、時計の針は既に夜の十一時を回っていた。
