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愛してるって言って!

第2章 【四人の男は恋をしている】

『義弟』

「ただいま!悪い、忍!すっかり遅くなっ…」
まるで、家へ駆け込むように帰って来た静矢は、リビングに入るなり口を噤んだ。
「忍…?」
忍は、リビングのソファで眠ってしまっている。
「待ってたのか」
忍に、日曜の夜、挙式が入っていた事をすっかり伝え忘れていた静矢は、なるべく早く帰れるようにと、仕事を片付けたつもりではあった。だが、静矢が家に着いた時、時計は既に深夜0時を指していた。テーブルを見ると、ご飯茶碗と、汁物用の椀が伏せて置いてあり、平皿にはおかずが盛られ、ラップがされている。更に、冷蔵庫にメモ用紙が貼ってあり、それには、「サラダあります」と書いてあった。静矢は思わず微笑んで、忍をもう一度見る。
「お前は俺の女房か、全く」
遅くなる時は気にするなっていつも言ってるのに。
「忍、おい。忍」
ソファに気持ちよさそうに横たわる忍の身体を揺らすと、忍はうっすらと目を開けた。
「ん…、あ、静矢さん…」
静矢さん、か。
「ただいま」
「おかえり…。すっかり寝ちゃった…」
「みたいだな。寝てるとこ悪いかなって思ったんだけど、最近は朝方結構冷えるようになったし、風邪ひくと思って」
静矢がそう言うと、まだ眠そうな目を擦ってから、突然ハッとして忍は起き上がった。
「あっ、ごめん!おれ、今また…!」
「えっ?」
「昔みたいに名前で…」
「あぁ、いいよ、そんなの。呼びやすい方で呼んでくれて構わないから。っていうか、今の今まで、無理して義兄さんって、呼んでたのか?」
クスクス笑いながら、静矢はネクタイを緩め、ハンガーにかける。
「えっと…まぁ、その…昔の呼び方がやっぱり慣れちゃってたし…。それに、義理の弟になったんだから、その方がいいかなって思って」
「そっか…。忍は俺に、色々と気を遣ってくれてたんだな。ありがとう」
ここに来てくれた事も含めて、静矢はそう言った。

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