愛してるって言って!
第2章 【四人の男は恋をしている】
一昨日の夜。あの瞬間から、静矢の中では、何かが変わろうとしていた。もうずっと、ここ何年もの間、忍には義兄さん、と呼ばれていて、名前で呼ばれる事はなくなっていた。それなのに、なぜ突然、名前で呼ばれたのか、少し気にはなった。が、あの時忍は、久しぶりに酒を飲んでいたし、何となくそれがきっかけになって、昔の感覚に戻っているだけなのだろうと、それで片付けてしまう事は容易にできた。問題は、静矢自身の方だ。
名前で呼ばれたあの瞬間、静矢の心臓はまるで揺れるように大きく鳴った。その理由がわからないまま、今さっき忍の口から出た、静矢の名前を呼ぶ声をもう一度聞いて、心臓が一昨日の様にまた大きく、確かに鳴った。その感覚には、幾度か覚えがある。だが、それを理解すると同時に、静矢は自分が情けなくて仕方なくなった。
茜の代わりじゃないんだぞ…、あいつは…!
静矢は、頭の中で、自分自身に必死にそう言って聞かせた。
どんなにそばにいて、どんなに優しくされても、それは義兄弟としての愛情であって、恋愛感情など存在しないという事くらい、当たり前にわかっているのに。
茜と忍は違う。ましてや忍は…男なんだ。
義理の兄としての忍への気持ちとは裏腹に、身体は確かに忍を求め始めている。確かに、忍は少し中性的で、茜によく似ている。外見はほとんど同じだと言ってもいい。だからと言って、これはあんまり身勝手過ぎる、と静矢は再び自分を責めた。
その夜はなかなか寝付けなかった。頭を冷やそうとベランダへ出てみたり、もう一杯だけと、コーヒーを飲んだりして、結局十五杯もコーヒーを飲んでしまい、やっと寝付けたのは朝方だった。しかも、忍に注意しておきながら、自分はソファで寝てしまい、朝、忍に起こされ、散々叱られた事は言うまでもなかった。
名前で呼ばれたあの瞬間、静矢の心臓はまるで揺れるように大きく鳴った。その理由がわからないまま、今さっき忍の口から出た、静矢の名前を呼ぶ声をもう一度聞いて、心臓が一昨日の様にまた大きく、確かに鳴った。その感覚には、幾度か覚えがある。だが、それを理解すると同時に、静矢は自分が情けなくて仕方なくなった。
茜の代わりじゃないんだぞ…、あいつは…!
静矢は、頭の中で、自分自身に必死にそう言って聞かせた。
どんなにそばにいて、どんなに優しくされても、それは義兄弟としての愛情であって、恋愛感情など存在しないという事くらい、当たり前にわかっているのに。
茜と忍は違う。ましてや忍は…男なんだ。
義理の兄としての忍への気持ちとは裏腹に、身体は確かに忍を求め始めている。確かに、忍は少し中性的で、茜によく似ている。外見はほとんど同じだと言ってもいい。だからと言って、これはあんまり身勝手過ぎる、と静矢は再び自分を責めた。
その夜はなかなか寝付けなかった。頭を冷やそうとベランダへ出てみたり、もう一杯だけと、コーヒーを飲んだりして、結局十五杯もコーヒーを飲んでしまい、やっと寝付けたのは朝方だった。しかも、忍に注意しておきながら、自分はソファで寝てしまい、朝、忍に起こされ、散々叱られた事は言うまでもなかった。