
愛してるって言って!
第3章 【合縁奇縁】
「蒔田!駐車場の雪掻き、一緒に頼まれてくれ。オレ一人じゃかなわん」
嶋が珍しく、静矢に頼み込むように声をかける。手には二つ、大きな雪掻き用のスコップを持っていた。
「了解。ちょうど今手が空いた。こういう季節になったな」
「助かる。ここから春まで長いぞ」
職場の中では二人は若手だ。雪掻きのような力仕事は、どうしたって一番率先してやらなくてはいけない立場だった。そしてこの時ほど、二人が駐車場の広さを実感する日はない。
「やっぱり三十にもなると腰にくるよな」
「ジジくさい事言ってないで、さっさと終わらせるぞ。っていうか、オレはお前の三つ上だ。三十なんてものはとうに過ぎ去った」
「そうだったか?」
「今更何言ってんだ。オレの方が先輩だって最初に言ったろ」
じゃあ嶋は三十三歳か。
嶋は普段から、あまり年齢を感じさせないところがある。若々しい、というのとも何か違うのだが。
「あー、嶋さんが先輩いびりしてる」
そこへ忍がやって来た。スコップを持っているところを見ると、どうやら忍も雪掻きを始めるらしい。
「先輩はな、後輩をいびるもんなんだよ。それが先輩の仕事だ」
「また意味わかんない事言ってる。今度罰金取るからね」
忍はそう言うと、早くも積もり出した雪をスコップで掻き始めた。
「忍も雪掻きか」
静矢は、手袋もしないで…と言いそうになったのを、喉の奥で止め、ごくっと飲み込む。そんな事言えば忍はまた、子ども扱いはやめろと言って、不貞腐れるに決まっていた。
「うん、なんとなく積もりそうだからさ、アプローチの道だけ作っておかないと、お客さん来れなくなっちゃうから」
「ん?お前んとこの若手はどうした?千春、今日は出勤してるんだろ?」
嶋は、カフェの方を覗いている。
「いるんだけど、なんか風邪ひいたみたいでさ。鼻声だったから。そんなにひどくないって言ってたけど、悪くなったら大変でしょ」
「無理もないな。ここの所、本当に急に寒くなったし。俺も去年の今頃、風邪ひいてた気がするよ」
静矢は去年、一人で過ごした冬を思い出した。あまりに綺麗な雪景色に感動し、薄着で散歩に出かけたせいで風邪をひいた事は、今も嶋には秘密だった。
「そうだよね。マスターが、今日は暇そうだし、千春は早く帰らせるって」
忍は、少し鼻をすすってから、手にはぁっと白い息を吐いた。
嶋が珍しく、静矢に頼み込むように声をかける。手には二つ、大きな雪掻き用のスコップを持っていた。
「了解。ちょうど今手が空いた。こういう季節になったな」
「助かる。ここから春まで長いぞ」
職場の中では二人は若手だ。雪掻きのような力仕事は、どうしたって一番率先してやらなくてはいけない立場だった。そしてこの時ほど、二人が駐車場の広さを実感する日はない。
「やっぱり三十にもなると腰にくるよな」
「ジジくさい事言ってないで、さっさと終わらせるぞ。っていうか、オレはお前の三つ上だ。三十なんてものはとうに過ぎ去った」
「そうだったか?」
「今更何言ってんだ。オレの方が先輩だって最初に言ったろ」
じゃあ嶋は三十三歳か。
嶋は普段から、あまり年齢を感じさせないところがある。若々しい、というのとも何か違うのだが。
「あー、嶋さんが先輩いびりしてる」
そこへ忍がやって来た。スコップを持っているところを見ると、どうやら忍も雪掻きを始めるらしい。
「先輩はな、後輩をいびるもんなんだよ。それが先輩の仕事だ」
「また意味わかんない事言ってる。今度罰金取るからね」
忍はそう言うと、早くも積もり出した雪をスコップで掻き始めた。
「忍も雪掻きか」
静矢は、手袋もしないで…と言いそうになったのを、喉の奥で止め、ごくっと飲み込む。そんな事言えば忍はまた、子ども扱いはやめろと言って、不貞腐れるに決まっていた。
「うん、なんとなく積もりそうだからさ、アプローチの道だけ作っておかないと、お客さん来れなくなっちゃうから」
「ん?お前んとこの若手はどうした?千春、今日は出勤してるんだろ?」
嶋は、カフェの方を覗いている。
「いるんだけど、なんか風邪ひいたみたいでさ。鼻声だったから。そんなにひどくないって言ってたけど、悪くなったら大変でしょ」
「無理もないな。ここの所、本当に急に寒くなったし。俺も去年の今頃、風邪ひいてた気がするよ」
静矢は去年、一人で過ごした冬を思い出した。あまりに綺麗な雪景色に感動し、薄着で散歩に出かけたせいで風邪をひいた事は、今も嶋には秘密だった。
「そうだよね。マスターが、今日は暇そうだし、千春は早く帰らせるって」
忍は、少し鼻をすすってから、手にはぁっと白い息を吐いた。
