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愛してるって言って!

第3章 【合縁奇縁】

「バカやろう!勝手に起きて、勝手にどっか行くな!治るもんも治らないだろ!?」
声が震える。安堵と、愛おしさが混じって、それは一気に押し寄せて来るようだった。そのせいなのか、身体にはまるで力が入っていない感じがした。
「ごめん…。静矢さん」
忍を腕に抱いている感覚をちゃんと感じたくて、静矢の腕には更にぎゅっと力が入る。
「急にいなくなるなよ…」
「本当ごめん。心配かけて」
静矢は、忍をそっと離した。
「家入れ。まだ治ったわけじゃないんだから。そんな事してると、また熱上がるぞ」
「うん」
気が付くと、忍は静矢をじっと見つめている。
「なんだ?」
「あ…ううん。なんでもない。良かった…静矢さん、泣いてるのかと思っちゃった」
そうだ。もう少しで俺は泣きそうだった。
静矢は怖かった。忍が、自分の前からいなくなってしまいそうな気がして。まるで、茜が突然消えた、あの時の様で。忍を失いたくない、という思いが、知らない間にこんなにも大きくなっている事に気付いた静矢は、溢れ出てしまいそうな想いを堪えて、小さくため息をつく。
それは自分勝手だと言われても。それでも。
今度こそ、守らせてくれ。頼むから…!
どうかこいつだけは、俺から奪わないでくれと、静矢は、また心の中で強く願った。

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