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愛してるって言って!

第3章 【合縁奇縁】

「まぁ。仲がいいのね。可愛い子。いくつなの?」
クスクス笑いながら、百合が言う。
「二十四です」
「じゃあ、ちょうど私達と一回り違うのね。若くて羨ましい」
「百合は十分綺麗だよ。千春、コーヒー二つ、もらえるかな」
そう言うと、勇司はカウンター席に座った。
「は、はい。かしこまりました」
もう…なんでこういう時に限って、誰もいないんだよ…。
忍は風邪で今日一日休んでいる。マスターも、今は休憩中で、店には千春しかいない。千春は自分の運の悪さに、ほとほと嫌気が差した。
まぁ…忍さんの風邪は、僕のがうつったっぽいけど…。
「素敵なお庭ね。入り口の所に植わってるの、ノースポールと…クリスマスローズ?」
「はい」
「夕べはあんなに雪が降ったのに、あの子達は負けなかったのね。冬のお花って、本当に強いわね」
カフェの入り口には、マスターお手製の花壇がある。それほど大きくはないが、ちょうど屋根のかかる場所にあるその花壇には、季節ごとにマスターが花を植えていた。ガーデニングが趣味であるマスターの花壇は人気があり、客の中には写真を撮って帰る人も多い。千春は、それには全く詳しくはないのだが、それが確かにセンスのいいものだという事だけはわかった。
「百合は、フラワーアレンジの仕事をしているから、植物が気になって仕方ないんだよ。百合、見に行って来てもいいよ。オレはここで待ってるから」
「いいの?じゃあ、せっかくお友達もいるみたいだし、少しお言葉に甘えるわ」
「あっ、雪が凍っている所もあるので、足元…気を付けてください」
「ありがとう。でも大丈夫よ。雪は慣れてるし、大好きなの」
そう言って微笑んで、百合は店を出る。落ち着いていて、綺麗で、素敵な女性だ。勇司には似合っている、と千春は思った。

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