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愛してるって言って!

第3章 【合縁奇縁】

時刻は夜8時を回っている。美術館近くの、洋食店に千春と嶋はいた。千春は、俯いたままぼそりと言った。
「すみませんでした…」
嶋はメニューを眺めながら、目だけでちらっと千春を見た。
「礼は言われても、謝られるような事はしてない」
「はい…すみません…」
謝ってばかりの千春に、嶋はため息混じりに聞く。
「あいつは何だ?元カレか?」
「はい…」
「ふうん。お前、男を見る目は皆無だな」
自分でもそう思った。今まで、勇司の一体何を見ていたのだろう。よく考えてみれば、誘いに乗らなかったのは、初めてだった。いつも、勇司に求められれば全て受け入れていた。それが千春なりの愛だと思っていたし、支えている事になると信じていた。だが、恐らく何かが違っていたのだと千春は思った。
「やっぱり、そうなんですかね。あの…引きました?」
「何にだ?あんな奴と付き合っていた事か」
「いえ、そうじゃなくて…」
「あぁ、男とどうのって事なら気にするな。オレが好きな奴も男だ」
「えっ…!」
「安心しろ。お前に何かしようとかは思ってないから」
「あ、はい…」
それもまた複雑ではあったりする。
「っていうかな、どうでもいいけど、お前もう少し警戒しろよ。オレが行かなかったら間違いなくやられてたぞ。夕方、カフェにいた時、あいつ完全に空腹そうな顔、してただろ」

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