
愛してるって言って!
第1章 【酒と男と双子の弟】
だが、そんな日々を当たり前の様に繰り返していたある日。静矢の心の中で、突然、茜の存在が大きくなり始めた出来事が起きた。
いつもの様に忍の家へ遊びに来ていた静矢は、夜中、煙草を吸いに外へ出ようとした際、廊下で茜と出くわした。
たまたま会った、というよりは、まるで静矢を待っていたかの様にすら見え、何となく、声をかけなければいけないような気がして、静矢は薄暗い廊下で茜に話しかけた。
「おつかれ。今日はシフト入ってなかったんだな」
「うん。静矢くんは、また忍とゲーム?」
「あぁ、新しいやつ」
「そう」
短い返事をした後、茜はふっと微笑んだ。その笑顔があまりに艶っぽく、それまで何とも思っていなかった茜を見て、静矢の胸は高鳴った。そんな事は初めてだった。
「本当に仲がいいのね、羨ましい」
「狭山さんも、一緒にやる?」
「やめておく。今、とってもいいところなの」
そう言って茜は、廊下にある大きな本棚から、二、三冊の文庫本を取り出した。
「本、読むの?」
「読むわよ。静矢くんは?読まない?」
「あんまり…」
「そう。残念」
その時、茜の持っている本の表紙を見て、静矢は咄嗟に茜の手首を取った。
「それ…!御舟の絵…」
「え…?」
「速水御舟の絵だろ?」
いつもの様に忍の家へ遊びに来ていた静矢は、夜中、煙草を吸いに外へ出ようとした際、廊下で茜と出くわした。
たまたま会った、というよりは、まるで静矢を待っていたかの様にすら見え、何となく、声をかけなければいけないような気がして、静矢は薄暗い廊下で茜に話しかけた。
「おつかれ。今日はシフト入ってなかったんだな」
「うん。静矢くんは、また忍とゲーム?」
「あぁ、新しいやつ」
「そう」
短い返事をした後、茜はふっと微笑んだ。その笑顔があまりに艶っぽく、それまで何とも思っていなかった茜を見て、静矢の胸は高鳴った。そんな事は初めてだった。
「本当に仲がいいのね、羨ましい」
「狭山さんも、一緒にやる?」
「やめておく。今、とってもいいところなの」
そう言って茜は、廊下にある大きな本棚から、二、三冊の文庫本を取り出した。
「本、読むの?」
「読むわよ。静矢くんは?読まない?」
「あんまり…」
「そう。残念」
その時、茜の持っている本の表紙を見て、静矢は咄嗟に茜の手首を取った。
「それ…!御舟の絵…」
「え…?」
「速水御舟の絵だろ?」
