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忍の横に千春が、静矢の横には嶋が座っている。
こうなる予定じゃなかったのに！
忍はぶすっとして剥れるしかなかった。これでは、いつもの飲み会と同じだ。
「そんなに怒るなよ。仕方ないだろ？たまたま行こうと思ってた店に、団体が来てて入れなかったんだ」
「怒ってなんかないよ、別に」
「賑やかになっていいよ。な？忍」
「まぁ、嶋さんが飲まないならいいけど」
嶋は、今日は珍しくノンアルコールのビールを頼んでいた。千春を送って行かなければならないからだろう。
「それにしたって、嶋が飲まないなんて、明日は吹雪かな」
静矢は笑って言った。楽しそうなその笑顔に、忍はつい見惚れてしまう。こんなに楽しそうなんだし、このまま何事もなければ、まぁそれでもいいかな、と忍は思った。
「吹雪は困りますけど…。でも、休肝日も時には必要ですからね」
「なんか千春、嶋さんの奥さんみたいだね。しっかり管理してもらわなきゃ」
「そうだな」
忍は、静矢と顔を見合わせて笑う。千春も、それに嬉しそうに頷いた。
「了解です」
「おい。忍」
千春が嶋の奥さんみたい、と言われた事に嶋は随分と不服のようだった。千春はそんな嶋を、不安そうに見つめている。
「だって、千春が一緒にいてくれると、嶋さんがお酒飲まないから安心なんだもん」
「あんな嶋を見るのは、本当に最初で最後だったのかもしれないな。別人みたいに酔い潰れてさ」
「そうなんですか？でも…嶋さんすごく強いのに…。ウオッカか、テキーラでも飲んだんですか？」
既に嶋の酒の強さを知った千春は、不思議そうだ。
「いや？チャンポンはしたけど、主にビールだったかなぁ、確か。なぁ？忍」
こっちに振るなよ…。何にも知らないで。
「うん…そうだね」
「ふうん」
不思議そうに嶋を見つめる千春に、忍は少し焦って言った。
「だけど、体調とかによってね、ほら。潰れちゃう時もあるから…」
「そうそう、体調がな」
そう言って笑みを浮かべた嶋を、キッと睨んでから、忍は半ばやけくそになって、ビールをもう一杯注文した。