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愛してるって言って!

第3章 【合縁奇縁】

嘘!?寝たの!?
ちょっと待ってよ、今、このタイミングで?!っていうかもう起きないと遅刻するし!
「静矢さん?もう起きないと…」
「ん…わかってる。あと五分だけ。五分したら絶対起きる」
いや、五分したら起こして、の間違いでしょ。
「もう、子供みたいな事言って…」
気持ちよさそうな静矢の寝顔を見つめ、忍はため息をつく。
なんでって、そんなの…。その後に続く言葉は何だろう。勢いで?なんとなく?或いは…。好きだから、とか?
いや期待するには早いって!
自分自身にそう言い聞かせながら、もう一度静矢を見つめた。
「おれは、静矢さんが好きだよ」
ずっと好きだった。ねぇ、静矢さんは?
忍はずっと夢見てきた。静矢といつか結ばれて、激しく求め合って、朝、同じベッドで目を覚ます事を。例え気持ちが繋がっていなくても構わない、と。けれど、実際にはそれが今、こんなにも忍の気持ちを不安にさせていた。
「期待…しちゃうじゃん」
忍は、本当なら、静矢を叩き起こしてでも、今、その口から答えを聞き出し、問い詰めたかった。だが、静矢が一瞬、あまりに幸せそうに微笑んだものだから、そんな気も失せてしまった。忍は、そっと布団から出る。床には、乱雑に脱ぎ捨てられた衣服が転がっている。忍は、それを一つ一つ拾い集めると、まだ少し熱く、火照る身体と、ドクドクと波打つ心臓を必死に落ち着かせながら、静かに一階へ降りて行った。

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