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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

二人は、絵の前に並んで、そこを目のやり場にして話を続けた。
「忍さん、蒔田さんの事ずっと好きだったみたいだから。僕は良かったって思いました」
「あぁ。おめでとう、と言ってやらなきゃな」
「嘘つき」
「なんだ、今頃気付いたのか」
千春は、首を横に振った。
「僕は嶋さんの事、ちゃんとわかってましたよ」
お前は、そうだろうな。
嶋と千春は似ている。根が真面目で、真っすぐで純粋で、無駄に勘が良いものだから、気が付かなくていいような事にも気が付いてしまう。だからこそ、嶋は勇司との一件の時も、千春をつい助けてしまった。面倒そうだし放っておけばいい、とも思ったが、どうしても、黙って見過ごす事ができなかった。
ただし、こいつの男を見る目は相変わらず皆無だな。
「正直、ホッとしてます。これで、嶋さんはやっと僕を見てくれるかもしれないから」
「学ばないな。オレはお前の元カレも霞むようなものすごい遊び人かもしれないぞ」
千春は噴き出して笑った。
「遊び人は、自分の事を遊び人かもしれない、なんて忠告してくれないですって」
「何にしろ、お前次第だ」
「わかってます」
嶋は、視線を感じて千春をちら、と見る。
「でも、嶋さんのそばには、僕がいますから」
そう言うと、千春は静かにその場を去ろうとした。
「千春」
嶋は、去っていくその背中に呼びかける。振り向いた千春は、微笑んでいるが、どこか悲しそうだった。
「今日は、送ってく」

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