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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

嶋は千春を部屋に連れ込むなり、暗がりの部屋の中で、その細い小柄な身体をきつく抱きしめた。そして、再び柔らかな唇に口づける。これまでの忍とのたくさんのキスを思い出しながら、それを振り切るように千春の唇を吸っては食んだ。千春の腕が嶋の体に絡みつくと、嶋はそのまま、千春の背中を腕で支えながら、ソファにその細い身体を押し倒した。
頭に浮かぶのは、忍と最初に出会った日の、少し酒臭くて、深くて苦しいくらいのキス。家まで送った後の短いキス。いつか、振り向かせてみせると、何度も何度も忍の唇を奪って重ねるうちに、気持ちを募らせてしまっていたのは寧ろ自分だった。
届かなかった。手に入れたかった。こうして、腕に抱いて、めちゃくちゃに愛したかった。
荒々しくなっていく嶋と千春の切ない息遣いが、静かな家のリビングに響く。邪魔な服を脱いで落としながら、千春が嶋より先に舌を差し入れて、嶋はそれを受け入れる。二人は口の中で生き物の様に動くそれを、夢中になって絡ませた。
「んっ…はぁ…あぁっ…」
千春の口からは、吐息と共に艶やかな声が漏れ始める。白い息が、窓から入る月明りで辛うじて見えた。
「はぁっ……嶋さ…ん」
嶋を苦しそうに呼ぶ声がして千春を見ると、千春はとろけるような瞳で嶋を見つめていた。その目を見た嶋は、もう一度千春の唇に短いキスをしてから抱きしめ、その胸に顔を埋める。そしてそのまま、嶋は大きく息をしながら、自分の昂った感情を必死に抑えた。
「嶋さん…?」
嶋さん、と呼ぶ人はスタッフの中にもたくさんいるのに、そして今、目の前にいるのは千春なのに、頭に浮かぶのは、忍の顔だった。
やっぱり、オレは最低だ。
「悪かった…」
声が震える。千春を身勝手に抱こうとした自分が許せなくて、それなのに千春の優しさが嬉しくて、その熱が温かくて、心地よくて、どうしようもなかった。
千春の手が、嶋の髪をそっと撫でる。
「大好きです、嶋さん」
千春が、嶋の耳元で囁いたその瞬間、嶋の目が熱くなって、じわりと濡れた。

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