
愛してるって言って!
第4章 【その愛に中毒を起こす】
ねぇ…静矢さんは、おれが好きなの?
その一言を聞いてみればすぐに答えは出るのかもしれない。けれど、それを聞いた途端に、この関係も終わってしまうかもしれない。いや、寧ろその可能性の方が高いのだ。きっと、嶋が以前言っていた通り、忍は、静矢にとって茜の代わりに過ぎないのだろう。初めて静矢が忍を抱いたあの時から既に一ヶ月。一度だって、静矢から甘い言葉を聞いた事はないのだから。
二人が果てた後、静矢は、優しく忍を抱きしめ、キスをする。それは、静矢の本当の気持ちが見えなくても、忍を無条件に温かく、心地よくさせてしまうものだった。そしてまた、いつもの様にその曖昧さに逃げ込んで、忍は目をそっと閉じるのだ。
そんな日が続いていたある日の朝。
忍はこのところ、考え事ばかりしていた。悩みの理由は決まっている。そんなものは忍には今、一つしかない。
「忍!」
店を開ける準備をしている最中、静矢が忍のところへ駆け足でやって来る。ビクッとして忍は店の入り口に目を向けた。
静矢は、息を切らしていた。相当急ぎの用事らしい。
「静矢さん…」
「ごめんな。突然なんだけど今日、また見学が入ったんだ」
「そうなんだ。席なら大丈夫じゃないかな?今日金曜だけど…平日だし」
「それでその、ゲストが友人…なんだけど」
「友人?じゃあ、東京から来るの?」
「うん、新郎も新婦も高校の同級生だ。お前の事も、一応紹介するから」
一応、ね。
「わかった。何時ごろ?」
「夕方、3時半には着くらしい」
「了解」
忍がそう言うと、静矢はホッとしたようにその場を去って行った。
「へぇ、蒔田さんのお友達が来るんですか?」
話を聞いていたのか、千春がエプロンの紐を結びながら奥から出てきて言う。
「うん、そうみたい」
忍は静矢の背中を見つめ、ふうっと息をついた。
「忍さん?」
そんな忍の顔を、千春は不思議そうに覗いている。
「ん?何」
「なんか…心配な事でもあるんですか?」
「あぁ、いや…そういうわけじゃないんだけど、どれだけ一緒にいてもさ、わからない事ってあるでしょ…。そういうの面倒くさいって思ってたけど、言葉が必要な時もあるんだなって思って…」
「言葉、ですか」
「うん…」
すると、千春はすうっと息を吸って、急に声色を変えた。
その一言を聞いてみればすぐに答えは出るのかもしれない。けれど、それを聞いた途端に、この関係も終わってしまうかもしれない。いや、寧ろその可能性の方が高いのだ。きっと、嶋が以前言っていた通り、忍は、静矢にとって茜の代わりに過ぎないのだろう。初めて静矢が忍を抱いたあの時から既に一ヶ月。一度だって、静矢から甘い言葉を聞いた事はないのだから。
二人が果てた後、静矢は、優しく忍を抱きしめ、キスをする。それは、静矢の本当の気持ちが見えなくても、忍を無条件に温かく、心地よくさせてしまうものだった。そしてまた、いつもの様にその曖昧さに逃げ込んで、忍は目をそっと閉じるのだ。
そんな日が続いていたある日の朝。
忍はこのところ、考え事ばかりしていた。悩みの理由は決まっている。そんなものは忍には今、一つしかない。
「忍!」
店を開ける準備をしている最中、静矢が忍のところへ駆け足でやって来る。ビクッとして忍は店の入り口に目を向けた。
静矢は、息を切らしていた。相当急ぎの用事らしい。
「静矢さん…」
「ごめんな。突然なんだけど今日、また見学が入ったんだ」
「そうなんだ。席なら大丈夫じゃないかな?今日金曜だけど…平日だし」
「それでその、ゲストが友人…なんだけど」
「友人?じゃあ、東京から来るの?」
「うん、新郎も新婦も高校の同級生だ。お前の事も、一応紹介するから」
一応、ね。
「わかった。何時ごろ?」
「夕方、3時半には着くらしい」
「了解」
忍がそう言うと、静矢はホッとしたようにその場を去って行った。
「へぇ、蒔田さんのお友達が来るんですか?」
話を聞いていたのか、千春がエプロンの紐を結びながら奥から出てきて言う。
「うん、そうみたい」
忍は静矢の背中を見つめ、ふうっと息をついた。
「忍さん?」
そんな忍の顔を、千春は不思議そうに覗いている。
「ん?何」
「なんか…心配な事でもあるんですか?」
「あぁ、いや…そういうわけじゃないんだけど、どれだけ一緒にいてもさ、わからない事ってあるでしょ…。そういうの面倒くさいって思ってたけど、言葉が必要な時もあるんだなって思って…」
「言葉、ですか」
「うん…」
すると、千春はすうっと息を吸って、急に声色を変えた。
