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涙の先に見えるもの

第1章 涙の先に見えるもの

      ***


 それから沢野さんと話すことはあまりなく、年に一度の全員参加の飲み会……という名のお局のご機嫌取り会。キャンセルはよっぽど特殊な事情がない限りNGだ。私は毎年、隅に座る……が、その日は許されず、出にくいソファの真ん中らへんの席に座らされた。

「相澤さん! 何回、言ったら分かるの!!」「いい加減にして!!」

 沢野さんと公園ランチをした日からそれは始まった。二人で話しているところをおしゃべり女に見つかって、話が広まったのだ。沢野さんは人気者。お局さんが沢野さんに告白して振られたことは知っていた。女の嫉妬ほどめんどくさいことはない。くだらない。普通に恋愛できるだけで私は羨ましさしかなかった。

 沢野さんは、今日は大事な接待で飲み会には来られないそうだ。それをいいことにこの女は……。

 宴会料理。お酒。酔っ払った上司の機嫌を取るお局女。

「相澤さん、もっとお酒飲みなさいよ~~」

「ちょっと今日は調子が……」

 ただでも人よりトイレが近い上にこのど真ん中のお酒なんて飲んだら耐えられる自信がない。

「まぁまぁ、相澤くぅん~~俺の酒が飲めねぇのかぁ~~」

「ほらぁ、部長もそう言ってますし……」

 無理矢理に進められるお酒。無理矢理に飲むしかない。

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